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side さくら
「誰なんだ? レイって?」
利一がすごい形相でそう怒鳴りながら俺を抱き上げ、ベッドの上に乱暴に転がした。
「んー!」
口を塞がれているんだから、答えられるわけないだろ…。
「そいつは、俺よりセックスが上手いのか?」
知らない…怜のセックスなんて知らない。でも、きっと優しくて丁寧なセックスなんだ…。
「そいつのセックスじゃ物足りなくなるくらい、犯してやる。ただの金好きの淫乱だと思ってたのに、恋人なんて作りやがって」
「お前は俺のおもちゃだろ? 身の程をわきまえろ」
利一は様々な暴言を吐きながら、俺を犯しつづけた。
テメーの恋人でもないんだから、そんなに嫉妬するなんてバカじぇねーの? 俺は頭の片すみでそう思っていた。
もしかしたら、俺に恋人が居るかとか、相手が誰かなんてどうだって良いのかも知れない。相手を罵って楽しんでいる、そういうセックスなんだ――。
「もっと欲しいか? いくらでもやるよ」
利一が目を見開きながらそう言った。正気を失っているようで恐ろしいとさえ思った。
「んんー!!」
もういらない! 頭を振って、イヤイヤをした。そんなの何の抵抗にもならないとわかってたけど――。
「イヤじゃないだろ? すごくイイだろ? その顔、ますますそそられるな」
利一の汗ばんだ手が、俺の両頬を包み込み、獣のようなキスをされた。
執拗な攻めに、俺はいつの間にか気を失っていた。
あちこち痛くて目が覚めると、俺はベッドの上に一人きりだった。縛られたままの重い身体を起こして、部屋の中を見回してみると、サイドテーブルの上と床に、クシャクシャの万札がばら撒かれていた。
「はぁ……」俺は深い溜息をついた。
あんな酷くて自己中な奴、いくら金を貰ったって、もう二度とやってやるもんか。身勝手で嫌味で、金があれば何でも許されるって思ってる奴なんか――。
でも…もしかしたら俺も、あいつと同じように、金に振り回されている、ただの馬鹿野郎なのかもしれない。
もう、金の為に寝るのはやめよう。少し前までは、金が貰えればそれで良いんだって、割り切ってたはずだったのに、今日の俺は後悔の気持ちでいっぱいだった。
何度も突かれたケツが痛かった。中から利一の放った精液が流れ出てるのがわかって、すごく気色悪かった。
縛られたままの手首が痺れるように痛い…。
クソッ、あの野郎、自分のネクタイを持って帰らなかったんだな――どこか冷静な自分がそう思っていた。
動ける範囲で体を見てみたら、利一の付けた赤い痣があちこちに残っていた。部屋の中は、俺と利一の放った精液の匂いが充満していた。
怜…怜は何処に行ったんだろう?
そうだった、女の所に行ってるんだ。俺がホントに体をはって、金稼いでいたってのに…。そう思ったら涙が出てきた。
痛いよ…怜、助けてくれよ――。女とやってる場合じゃないよ! 早く帰ってこい…。
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