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 side 怜  彼女の体を揺さぶりつづけ、何度目かの絶頂を迎えた彼女の首筋に牙を立てました。快楽に溺れている彼女の血は、熱くて濃厚で、どんなお酒よりも、私を酔わせるようです。  でも本当は、さくちゃんの血の方がもっと濃厚でした――心の何処かでそんな事を考えていました。  再びさくちゃんの事を思い出している自分を戒めました。どうして、さくちゃんの事ばかり気になるのでしょう…。  気を失ってしまった沙江子さんの体に掛け布団を掛け、私は急いで洋服を着ました。目を覚ました沙江子さんに会う気にはなれず、そのまま彼女の部屋を出ました。今後の事も考えて、沙江子さんにはメッセージを送っておきましょう――。  外に出るとすっかり日常が始まっていました。  さくちゃんは、どうしているでしょうか? あの男性は、まだ部屋に居るのでしょうか?  さくちゃんは、あの人を私にどう紹介するつもりだったのでしょう? 『これ、俺の恋人なんだ。お前が出ていったら、一緒に暮らすんだよ…』さくちゃんが、そう言って恋人に甘えている姿が、頭の中に浮かんで、胸が苦しくなりました。  さくちゃんと男性に会いたくなくて、どこかで時間をつぶそうかと思いましたが、行く宛てもなかったので、さくちゃんのマンションに帰る事にしました。  電車を降りて商店街を抜け、マンションに向って歩き始めます。マンションに近づくにつれて、足が重くなっていくようでした。  部屋の前に立って、カギを入れようとしました。ですが、カギは掛かっていませんでした。 私は鍵をかけたと思うのですが…混乱していたので、忘れてしまったのかも知れません…。  ノブを回してドアを開けます。カギを開けたままであんな……なんて無用心なんでしょう…。  玄関には、さくちゃんのハイヒールが転がっているだけでした。相手の人はもう帰ってしまったのかもしれません。  部屋に入ると、私が出かけて行ったままの状態でした。さくちゃんはまだ、寝室で寝ているのでしょうか?  その時、寝室から、唸るような声が聞えて来ました。弱々しい声です。 私は、慌てて寝室のドアを開けました。 「…さくちゃん!」  ドアを開けた途端、部屋にこもった匂いがムッと漂ってきました。ベッドでは、さくちゃんが、裸のまま手を縛られ、口にはタオルが巻きつけられて苦しそうにうめいていました。  ベッドの横のテーブルと床には、クシャクシャのお金が散らばっています…。  さくちゃんと一緒に帰ってきた男性は、さくちゃんの恋人ではなかったのですね? でも…またお金の為に、好きでもない誰かに抱かれていたのですか?  男性がさくちゃんの恋人ではなかったようだ、という安堵の気持ちと、そこまでしてお金を稼がなくても、私がお客としてお店に行くと言ったのに――という気持ちで心が乱れていました。

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