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side 怜  荷物を持つと台所に行って、買ってきたものを収納し始めました。  野菜や冷凍の食材を冷蔵庫に片付け終り、冷蔵庫のドアを閉めようとした時、居間からさくちゃんの声が聞えました。 「怜…ごめん。やっぱり手伝って」  チラッと見ると、薬はつけ終わっているようで、傷の上にはガーゼがのせられていました。これなら、どうにかお手伝い出来そうです。 「わかりましたよ。今行きます」  おかしなものなのですが、さくちゃんに頼られるととても嬉しい気持ちになります。さくちゃんの為に何かしてあげたい…って思うのです。  急いで手を洗い、さくちゃんのそばに行きました。ですがやはり、さくちゃんの隣りに座った途端、血の匂いが、私の正常な意識を遠ざけようとしました。  ゴミ箱を見ると、さくちゃんの血がベットリ付いたガーゼと包帯が、無造作に捨ててありました。 このままでは、自分が何をするかわからないと思い、私は台所からビニール袋を取ってきて、血の付いたガーゼ類を詰め込みました。それから、袋の口を硬く結んで、台所のゴミ箱の中に押し込みました。  深呼吸をして気持ちを整え、もう一度手を洗ってから、さくちゃんの所に戻りました。 すると私の様子を、不思議そうに見ていたさくちゃんが、慌てて私から視線を逸らし、両手を出しました。私が触れると、さくちゃんがビクッと体を硬くします。可哀想に…。  このところ様子がおかしかったのも、あの男のせいだったに違いありません。しつこく関係を求められていて、そして、昨日はとうとう薬まで飲まされて…。さくちゃんが私を頼って下されば、あんな男の自由になんてさせなかったのに。  さくちゃんの痛々しい姿が頭に浮かび、胸が締め付けられるような思いでした。  包帯を巻き終わると、さくちゃんが安心したような顔をして、私にお礼を言ってくれました。 少し切ない視線で私を見ているさくちゃんを、思わず抱きしめてしまいそうでした。  もう大丈夫ですよ、私が守ってあげます。さくちゃんを傷つけるような人、私が許しません…。  それから、さくちゃんをソファーに連れて行き、台所に戻って買ってきた物を持つと、寝室に行きました。  取り替えたばかりだったのですが、寝具のカバーを全部外しました。それから、先ほど買ってきた、薄緑色のカバーを掛け始めました。緑色は、気持ちをリラックスさせてくれるはずです。ちょっと前に一緒に暮らしていた女性がそう話していました。  それから、サイドテーブルには、アロマキャンドルを置いて、火を灯します。しばらくすると、微かにカモミールの香りが漂ってきました。

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