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side さくら  何時間眠ったのだろう? 暖かい手が俺の頭を撫ぜているのがわかった。 「怜?」  目を開けると、怜がベッドのそばにいた。きっと俺の様子を見に来てくれたんだろう。 「今何時?」 「夜の10時ですよ」 「そっか…よく寝てたんだな…」  夢も見ずにぐっすり眠れていたけれど、体のダルさが全然抜けていない感じだった。 「何か食べませんか?」 「ん? いらない。ちょっとトイレ行ってくる」  あちこちに痛みが残っていた。でも、どうにか体を動かす事は出来そうだ。怜が居なくなったら、どんなに辛くても自分でやらなきゃならないんだから…。 少しフラつきながらも、俺は自分で立ち上がった。 「さくちゃん、掴まってください」  心配そうに怜が腕を伸ばしてきた。 「もう平気。自分で歩けるから」  1人でやらなくては、という気持ちと、怜に頼ってしまいたい気持ちが葛藤していた。 もし今、怜が居なくなったら…そんな事を考えると、ますます気持ちが混乱してくる。俺、そうとうおかしくなってるのかな…? 「あれ?怜…そこで寝るの?」  居間に戻ると、怜がソファーで寝る準備をしていた。 「はい…。さくちゃんが熟睡出来ないといけないですから…」 「大丈夫だから…」  傍にいてくれよ、怜。お前が俺から離れようとしてるんじゃないか? って考えるだけで、オカシクなってしまいそうだ。 「怜なら大丈夫だから…」 「ですが、さくちゃん…」 「ダメ。…なぁ、怜、ベッドで寝てくれよ…不安で壊れそうになる」  気持ちが抑えられない。なぁ、怜、俺を置いて行かないで…。 「わかりました」  しょうがないですね…って顔をして、怜がそう言った。俺はホッとして、怜の手を握っていた。怜が力強くその手を握り返してくれて、胸が熱くなった。 「怜…」  傍に居るだけじゃ嫌だ。抱きしめて欲しい…俺が不安じゃなくなるように。 「はい、何ですか? さくちゃん」  欲しい笑顔がすぐそこにある…。でも、ダメだ、怜は俺のものじゃない。思い出せ…この怜に対する想いは、幻覚なんだぞ…。 「ううん…何でもない。ありがとう」 「では、すぐ行きますので、先にベッドに入っていて下さい」 「うん」  しばらくすると、怜がベッドに入ってきた。少し冷えた体を背中に感じて、体が熱くなるような思いがした。 「おやすみ」  怜の方に体を向けてから、そう言った。怜の顔を見て安心したかった。優しい笑顔を向けて欲しかった。 「お休みなさい、さくちゃん」 「あのな…」  自分が何を言おうとしているのか気が付き、慌てて言葉を止めた。抑えようと思っても、すぐに溢れそうになってしまう…。

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