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side さくら 「はい、何ですか?」 「ホント、色々ありがとう」 「どういたしまして。私は、さくちゃんに元気になって頂きたいんです。元気なさくちゃんが大好きですから」  怜の言葉は優しすぎる…好きだなんて言葉、俺に言うなんて酷いじゃないか。 子供をなだめるように髪を撫でられ、苦しくなって怜の胸に顔を押し付けた。どうしよう…止められない。 「ごめん。今だけこうしてて…頼む」 「わかりました」 「ごめん…」  俺も怜が好き…でも、怜の言ってる「好き」とは、違うんだ。ずっと傍にいたい、俺の事だけ見て欲しい、他の誰にも触れて欲しくない…。  その時、怜の腕が俺を抱きしめようとして、戸惑ったように動きを止めた。怜のバカ…。 「離さないで…」 「わかりましたよ。さくちゃん」  壊れ物でも扱うように、怜が俺を抱きしめてくれた。優しくて暖かい腕の中で、俺は泣いていた。どうしてよいのかわからない感情が、俺を混乱させていた。 「泣かないで下さい。何があっても、私が守ってさしあげますから…」  涙がとまらなかった。ずっと守ってくれるのかよ?  怜に俺の気持ちを伝えたら、どうなるんだろう? こんなに苦しいのなら、伝えてしまおうか?  あぁ、そうだ…俺、お前に血を吸われたせいで、おかしくなってたんだった。  怜の事が好きだなんて、お前に傍にいて欲しいって思うなんて、お前とキスしたいなんて…そんなの、俺の意思のはずないじゃないか――。  俺は怜に抱きしめられて、泣き続けた。 そして、いつの間にか眠っていたようで、気が付くと窓の外が明るくなっていた。  隣りに怜の存在を確認し、眠っている頬にそっとキスをした。  バカだな、俺。わかってるのに、抑えられない。布団の中から手を出し、怜の頬に触れた。きめ細かな綺麗な肌だ…。  それから、指で怜の唇に触れてみた。その唇にキスしたい…そう思って顔を近づけた瞬間、手首に痛みを感じた。 「…うそ…」  あまりの痛さに、慌てて手首を見てみると、包帯がみるみる赤く染まっていった。何で…どうして? 「怜! 怜…」  俺は慌てて怜を起こそうとした。でも、怜は眠ったままで起きる気配がなかった。  そうだ、自分でどうにかしなくちゃ…。  とにかく、傷口の様子を見てみようと思い、赤く染まった包帯を外し始めた。包帯とガーゼを取り、ティッシュで血を拭き取ってみた。  傷は広がっている訳でもないのだけど、ジワジワと血が滲み出していた。ティッシュを重ねて、傷口を抑え、居間に救急箱を取りに行こうとした。

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