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side 怜  さくちゃんが私を睨みつけていました。 一瞬、私は何をしていたのかわからず、呆然としていました。ですが、両手につている血を見て、取り返しのつかない事をしてしまった事に気がつきました。  私を睨みつけていたさくちゃんの両方の目から、大粒の涙がポロポロこぼれ始めました。 なんて事をしてしまったのでしょう…口の中に広がる血の味…。これは、まぎれも無く、さくちゃんの血の味です。 「怜のバカヤロウ!」  泣きながらさくちゃんが私の胸を叩きました。さくちゃんの手首を見てみると、傷口から再び血が流れ出していました。 「なぁ…怜? 俺、死んじゃうのか? 2回もお前に血を吸われて、俺、どうなるんだよ? 俺、死にたくないんだよ!」 「ごめんなさい…さくちゃん」 「謝って済むのかよ? どうしてくれんだよ? お前のせいで、俺の人生メチャクチャじゃないか…お前が俺の前に現われたから…俺の血を吸いやがったから…・お前が…お前が、優しいから」  私を叩いていた手が、私の体を抱きしめました。胸が熱くなってきました。  私はやっと、はっきり自覚しました。私がさくちゃんの血に執着しているのも、さくちゃんの血の匂いで意識が途切れてしまうのも、そして、さくちゃんの血が止まっていないのも、全て私がさくちゃんの血を吸ってしまったせいなのだろうということを。  これがきっと、水沼先生の奥様の言われていた、何らかの体調の変化というものなのでしょう。ただ違っていたのは、人間のさくちゃんへの体調の変化よりも、私の方が早く変化が現われた事です。 いえ、もしかしたら、さくちゃんが怪我をしなかったから、気が付かなかった事なのかもしれません。  とにかく、こうなったら一刻も早く、先生に診ていただかなければなりません。  謝っても済まない事はわかっています。でも、今の私には、謝ることしか出来ませんでした。 「本当にすみませんでした」  さくちゃんの目からは、再び涙があふれてきました。 「バカヤロウ…」  力なくそう言ったさくちゃんが、私の肩に顔を押し付けて声をたてて泣き出しました。 「とにかく、急いで水沼先生に連絡してみます」  私はスマホを取りに行こうと思い、さくちゃんの体からそっと離れようとしました。 「怜、行くな…俺をおいて行くなよ…怜」  さくちゃんが泣きながら、私の体に回していた腕に力を入れました。 「どこにも行きません。ちゃんと2人で水沼先生に診ていただくのです。電話を取ってきます。不安なようでしたら、一緒に行きましょう」 「うん」  さくちゃんが小さな声で答えました。

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