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side さくら  怜は正気に戻った後、俺の傷の手当てをしてくれて、その後、医者に電話をしていた。  水沼って医者は、まだ放浪先から家に帰ってきてないようだったけど、俺達の身体に出てる症状は、先生の奥さんの言っていた体調の変化の表れだって事がはっきりしたから、2人で医者の家に行くことになった。  どうやら来週には、医者が帰ってくるらしい。これで、やっと心配事がなくなるじゃないか。 このごろはモヤモヤした気持ちで、精神的にかなり疲れてしまった。だから、もう、早くすっきりしたい…。 この奇妙な感情とおさらばしたい――。 「医者って、どこに住んでんだよ?」 「小樽です…」 「…小樽って…」 「北海道の小樽市です」 「それじゃ…しばらく店休まなきゃなんねーのかよ?」 「はい。そうなります…」 「何でこんな事になっちまったんだよ…店、行かなかったら、お金もらえないんだぞ?」 「申しわけありません。きっと、先生に診ていただけば、治るはずなので。少しの間、お店を休んで下さい。その間のお給料は、私が支払いますから…」 「ふざけんなよ、なんだよそれ?」  そうは言ったけど、正直助かったと思った。北海道に行くんだって、金が掛かるんだ。出来れば自分の貯えを使いたくない…。 「…治るまでの間、私がさくらちゃんのお客様になります」 「お前が俺の客?」 「そうです。どうでしょうか?」  そっか、専属のお客様ね。それも悪くないかもしれない。どうせ、後1週間くらいの事なんだろう? 最後くらい、お前の言うこと聞いてやってもいいか…。  軽く考えようとしても、どんどん心が重くなる。怜との別れが確実に迫っているんだ…。 「わかった」  そうか…じゃあ、もし怜に抱かれてやったら、金をたくさんもらえるのかな? そんな事を考えた。  有り得ない。今の状態で抱かれたら、その間にまた怜に血を吸われちまうじゃないか…。いや、それより、怜が男を抱く訳ないじゃないか。何考えてるんだろう? でも、ほんの一瞬、本気で怜に抱かれたいって思った。もう末期症状なんだろうか?  俺と怜にこの先の生活は無いんだ。医者に行ったら、それでおしまいなんだから。 「わかったけど、血を吸うのと、セックスはナシだからな」  怜の口元を右手で押えながら、泣きそうな気持ちを堪えて冗談を言った。 医者に見てもらった後も、この気持ちのままだったらどうすれば良いんだろう?  指ではなく、自分の唇で怜のこの唇に触れたいって思ってる気持ちも、きれいに消えてなくなるんだろうか? 右手の指先で触れた怜の唇は、柔らかくて温かかった。  さっき唇に触れたときは、傷口に痛みがあったけど、今度は痛みも無いし、出血も無かった。 だけど……胸が痛くて仕方なかった。

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