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side さくら
「当たり前です」
怜が俺の鼻の頭を指で押した。胸がドキドキして、怜を見ていられなかった。
「バーカ」
胸の鼓動よ静まれ…これは俺の意思じゃないんだぞ…。
「お客様にそんな態度しないで下さい」
怜の顔を見た。怜が笑ってる…。
「まだ、金もらってないし」
好きだよ、怜。
「そうでしたね」
怜が俺の頭をポンポンって叩いた。大事にされている感じがして、その優しさに甘えたくなる。
「…でも、当然だよな。お前が俺の血を吸ったりするからだよ」
そうだよ。こんな変な俺、俺じゃないんだから。
「そうでしたね…申し訳ありません」
怜が悲しそうな顔をした。
「…そうだよ…」
あぁ、そんな顔させたく無かったんだ。怜、俺を見て笑っていて。優しい瞳で見つめていてよ…。
ダメだ。頭の中が混乱してる。
「店に連絡しなきゃ…。戻って来たら、仕事が無かったりしてな…。それよかその前に、くたばってたりして…」
混乱した俺が、怜に文句を言ってごねている。でも、怜は一度だけ悲しい顔をしたけど、その後ずっと笑っていてくれた。ごめんな怜。お前もきっと不安なはずなのに…。
少し気持ちが落ち着いてから、店のママに連絡をした。
ママが、俺が休むのは利一の事が原因じゃないかって、心配してくれた。
どうやらあいつは、他の店でも気に入ったホステスに手を出して、怪我をさせた事があるようだ。
警察沙汰になりそうになったけれど、親と金の力で、その件を揉み消してしまったらしい。
俺にももっと金払え! と思ったが、あいつとはもう関わリたくなかったから、とにかく店に出入り禁止にしてもらえないだろうか? という事だけ伝えた。
ママからは、「早く良くなって、お店に戻っておいで」と言ってもらえた。
帰ってくる場所があって良かった…。前の生活に戻るだけなんだ。怜が居なかった頃の、普通の生活に…。
店に電話をしている間に、怜が朝食を作ってくれていた。
「さくちゃん、食事しましょう」
台所から怜の声が聞こえて来た。
「うん」
そう言えば、昨日は殆ど食べていなかった事を思い出し、ソファーから立ち上がろうとした。その途端、眩暈がして、その場に座り込んでしまった。
気持ちが悪い…
「さくちゃん?」
怜が近づいてくるのがわかるのだけど、声を出す事が出来なかった。
「どうしたんですか!」
恐いよ…怜。俺の身体、どうなってるんだろ?
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