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side 怜  さくちゃんがソファーの前に座り込んで、真っ青な顔をしていました。 「さくちゃん、私に掴まってください」  何も言わないで俯いたまま、さくちゃんが私の肩に腕を掛けました。もう片方の手は、口元を抑えています。 「吐き気がするんですか?」  私の問いかけに、さくちゃんが小さく頷きました。 「立ち上がれますか?」 「うん…」  さくちゃんが、よろよろと立ち上がりました。私は急いでさくちゃんの身体を支えて、トイレに連れ居ていきました。  さくちゃんは、しばらくトイレにこもったままでした。背中をさすろうとしたら、さくちゃんは「外で待って」と言って、ドアを閉めてしまいました。  トイレの中からは、さくちゃんの苦しそうな声と、すすり泣きが聞こえていました。 どうしたら良いのかわからなくて、私はドアの前に立ち尽くしていました。それから20分位経った頃、トイレのドアが開き、青い顔をしたさくちゃんがよろよろと出てきました。 「どうですか? 少しはすっきりしましたか?」 「うん…」 「食事…無理そうですね」 「ごめん…」 「わかりました。もう少し寝てたほうが良いかもしれませんね。お粥でも作っておきますから、後で少しは食べて下さい…。昨日から殆ど召し上がっていないですし…」 「うん」  私が手を貸そうとしましたが、それを振り切って、さくちゃんは寝室に行ってしまいました。  とにかく先生の所に行く準備をしなくてはと思い、私は荷物を作ってしまう事にしました。 寝室に入り、クローゼットから2人分の服を適当に出します。それから、傷の手当てに必要なものや、そのほか必要そうな物を集めました。  さくちゃんはベッドで、私の様子をボンヤリと見つめていました。 「さくちゃん、旅行用のカバンはありますか?」 「うん。あるけど」 「場所を教えて頂ければ、私が出しますので…」 「…えっと、そっちの部屋の…あぁ、いいや、俺が出すから」 「いえ、後でも良いんですよ…」 「ううん。大丈夫」  さくちゃんが、ダルそうに起き上がり、ベッドから降りました。 「掴まって下さい」 「良いよ」 「無理しないで下さい」 「わかったよ…」  さくちゃんは、苦しそうに眉をしかめてから、私に腕を回して寄りかかってきました。 「ありがと」  身体が熱いように感じるのは、体調が悪くなってる証拠なのでしょうか?  カバンがある場所を教えてもらってから、さくちゃんをベッドに連れて行きました。 「怜、いつ医者の所に行く?」 「そうですね…すぐにでも、と思ったのですが、さくちゃんの具合が良く無さそうなので、ちょっと様子を見ようかと」 「でもさ、そんな事言ってられなくない? お前、俺の血が欲しくなるんじゃない…」 「そうかもしれません。今朝さくちゃんの血を頂いてしまったので、今は平気なようです。ただ、この状態もいつまで続くかわからないので…」 「飛行機のチケット、取ってくれよ。チケット取れたら、行こう。早く…俺が、俺じゃなくなっちゃう前に…」 「え?」 「ううん。早く行って、元の自分達に戻ろうよ…」  言い終わると、さくちゃんは布団にもぐってしまいました。  さくちゃんの言葉が気になりましたが、とにかく、荷物をカバンに詰めてしまいましょう。  私は旅行カバンを持って来て、先ほど出しておいた荷物を詰め始めました。

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