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side さくら 「ママ、この人よ。ねぇ、知ってるんでしょ?」 「この人? この人は人間じゃないのよ。何百年も生きてきた吸血鬼。可愛そうに…病気の恋人に自分の血を全部あげてしまって…」 「え? 何…それ…?」 「人間相手に本当の恋をしてしまった、哀れな吸血鬼なのよ」 「…ね、ねぇ。その人…いえ、その吸血鬼はどうなったの?」 「さぁ。私は知らないわ」  何だよ…血を全部あげたらどうなるんだよ? 恋人って誰なんだよ? 胸がドキドキした。もしかしたら、もう2度と怜に会えないかも知れない…。  それからまた、俺は怜の姿を求めてドアを開けていった。 だけど、どの部屋にも怜は居なくて、これ以上捜しても無駄なような気がしてきた。俺と怜の運命なんて、こんなもの…。あの日会ってしまったのが間違いだったんだ。  最後に廊下の1番はずれにあったドアを力なく開けた。誰かがドアに背中を向けて絵を描いている。 「怜…怜はどこ?」  俺の声に、その人が振り向いた。  俺の捜していた愛しい人が、俺を見つめていた。いつもの優しい瞳で…。俺は、嬉しくって、彼に抱きついた。 「何でこんな所に居るんだよ? 探したじゃないか」 「すみませんでした…」 「どうして俺の傍に居なかったんだよ?」 「だって…私は、吸血鬼なんですよ? あなたの傍に居る資格なんてありません…」  怜が悲しそうな顔をして、俺を見つめていた。 「そんなのどうだって良いんだよ。なあ怜、ずっと、俺の傍に居てくれよ…これからもずっと」  言いたかった言葉を口にしたら、重苦しかった心が軽くなった。 「傍に居ても、良いんですか?」 「居てくれないと困る」  そう言って、自からキスをした。温かくて、柔らかくて、愛しくて、涙が出た。 怜が俺を抱きしめてから、指で涙を拭ってくれた。 「愛しています…さくちゃん」 「愛してるよ。怜」 「良かった、捜して下さって。ずっと待っていましたよ、あなたが来てくれるのを」 「怜!」  嬉しくて、嬉しくて怜の身体をギュウギュウ抱きしめた。 「痛いですよ…さくちゃん」 「あ、ごめん…」 「ねぇ、それより、さくちゃん、これ見てください」  怜が、自分の描いていた絵を、俺に見せた。  そこには、ウエディングドレス姿の俺と、タキシードを着た怜が笑っていた。 「俺…花嫁?」 「そうですよ。とっても綺麗な花嫁さんです」 「うーん…まあ、いいか…」  白い部屋のベッドで怜に抱かれていた。裸の身体を弄りあい、お互いを高め合う…。 「良いんですか?」 「うん」  怜が俺を見つめて、優しく微笑んでいた…。

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