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side さくら
目が覚めると、俺の身体は燃えるように熱くなっていた。身体中がだるいのに、ある一部分に血が集まって、苦しいほどになっていた。
何て夢を見てしまったんだろう…。夢の中でまで、怜に愛を求めてしまうなんて…。
とにかく冷静になろうと思い、俺は布団をはだけて、火照った体を冷やそうとした。でも、熱をもった俺の体は、ますます熱くなるばかりだった。
くそっ…何なんだ…。おさまらないんだったら、抜いてしまった方が早い。
俺は右手をパジャマのズボンの中に突っ込み、熱く勃ち上がっている自分自身を手で包み込んだ。
「…はぁ…」
夢の中で触れあった怜の身体を思い出しながら、自分で自分を慰める。酷く興奮した。
怜が舌で耳をソロリと舐めてから、俺の首に唇を這わせる…俺の胸の先端を舐めながら、怜の手は俺自身を弄りまわす。胸の辺りにあった唇が、少しづつ下のほうに移動してきて、俺自身を咥え込んだ。
あぁ…堪らない…怜が欲しい…。
「うっ…」
頭の中で、俺は怜に抱かれた。昇りつめる時、今までに感じた事の無いくらいの幸せを感じた。
その幸せを感じたくて、何度も自分を慰めた。自分の手を怜の手だと思い、体中を愛撫する。止められない。おかしくなりそうだ…。
そして、何度精を吐いただろう? 手首に痛みを感じて現実に戻された俺は、真っ暗な部屋の中に一人取り残されたような不安に襲われた。
慌ててティッシュを取ると、自分の吐いた精液を拭き取った。だるかった体が、ますます重たく感じる。自己嫌悪に陥りそうだ。
怜を求める気持ちが偽りなんだって、自分に言い聞かせる気力も無いくらい、疲れきってしまった。こんな事なら、今は自分の気持ちに従っておいたほうが、精神的にも楽なはずだ。どうせ医者に見てもらったら、自然に治るんだろうから…。
もう一度眠ろうと思った。熱は冷めたようだけど、不安な気持ちが消えなかった。
怜に眠るまで、ベッドの傍にいてもらおうと思い、怜を呼びに行くことにした。
「怜…?」
ドアを開けながら、怜を呼んだ。だけど、返事が無い。
居間を覗いてみたら、怜がソファーに座って、目を瞑っていた。
「怜、起きてる?」
どうやら眠ってしまってるようで、ピクリとも動かなかった。
俺は、ソファーに近づいて、怜の眠っている顔を眺めていた。
引き寄せられるように、ソファーに座り込み、もう一度、怜の顔をじっくり見つめた。そして、怜の柔らかい髪をかきあげる…それから、両手で頬を包み込んだ。抑えられない欲求に従い、唇を寄せると、怜の頬にキスをした。
そして…触れてみたかった怜の唇に、自分の唇を重ねた。思った通り、柔らかくて気持ち良い。
怜の唇を舌で辿った。…何て幸せなんだろう。起きないで怜…もう少し、そのままでいて。
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