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side 怜  離陸してからしばらくたった頃、さくちゃんが具合悪くなってしまいました。 真っ青な顔で席を立ったさくちゃんを見た時、どうしようかと思いましたが、トイレに行った後は、気分も良くなったようなので取りあえず安心しました。  さくちゃんの事が心配だったので、さくちゃんがトイレにいる間に、急いでさくちゃんの隣の席の方に、席を変わって頂けるようお願いしました。  最初からさくちゃんの隣の席を予約すれば良かったのですが、飛行機の中で急にさくちゃんの血を頂きたくなってしまってはいけないと考え、隣り合同士の座席を避けたほうが安全であろうと思ったのです。 ですが、もう離れた席に座る気にはなれませんでした。  先ほど、自分の座席にいた時も、前に座っているさくちゃんの事が気になってしまい、隣の女性たちの話も殆ど上の空でした。  隣に座っていた女性はお二人ともとてもお綺麗で、大人な雰囲気の方たちでしたのに、ちっとも興味がわかなかったのが、自分でもとても不思議でした。  それくらい、今の私の頭の中は、さくちゃんを思う気持ちでいっぱいだったのです。  トイレから戻って席に座ると、さくちゃんの為に乗務員さんに毛布を持ってきて頂きました。  さくちゃんが掛けた毛布の下で、まわりからわからないようにさくちゃんと手を繋ぎました。さくちゃんがギュッと握り返してくれたことがとても嬉しく思えました。  さくちゃんが眠ってしまった後、繋いでいた手を離したのですが、しばらくすると、さくちゃんが私の手を探していることがわかりました。 私はさくちゃんを、複雑な思いで見つめました。さくちゃんは目を閉じたまま、眉間にしわを寄せ、悲しそうな顔をしています。  不安で仕方がなくて、私の手を探しているのだと思うのですが――。  先ほど寝入る前に、私の肩に頭を乗せたさくちゃんが「そばにいて…」と囁いたですが……私はその言葉を、自分の良いように考えてしまいそうでした。  さくちゃんのそばに居られるのなら、永遠の命なんて要らない。さくちゃんと共に生きる事が出来たら、さくちゃんが夢を叶える時、一緒にいる事が出来たら…それから、共に命の終わりを迎える事が出来たら…。それが可能だったらどんなに幸せでしょう。  私が再びブランケットの中に手を入れると、さくちゃんの手がそれを見つけ、ギュッと握りました。    さくちゃんを愛しく思う気持ちは、ますますふくれ上がるばかりでした。 この気持ちを伝えたら、私たちの関係はどうなってしまうのでしょう――?

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