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side 怜  飛行機を降りて、荷物が出てくるのを待っていると、機内で隣にいた女性達が話し掛けて来ました。  私が女性と話をし始めると、さくちゃんの表情が不機嫌そうになって行くのがわかりました。  さくちゃんは何故、私が女性と話しているのが嫌なのでしょう? 私の事を、エロ親父と言って軽蔑しているからなのでしょうが、もしかしたら、さくちゃんも私の事を…と一瞬考えてしまいました。  さくちゃんは女性達の方を見ようともせず、私の洋服の裾を握り締めています…。私の思い過ごしで無かったら、さくちゃんも私と同じ思いでいてくれるのではないでしょうか?  いえ、やっぱり、そんなはずありません…。    女性達が居なくなると、さくちゃんが私に向かって、ニッコリ微笑みました。 私は微笑みを返しながら、「抱きしめてしまいたい…」と思う気持ちを、必死に抑えました。  その後、出口の所にいた水沼先生の奥様、ゆかりさんを見つけて、少しお話をしました。 以前会ったときから、もう何十年も経っているのですが、相変わらずお綺麗で、私よりもはるかに年上だなんて誰が思うでしょう?  ゆかりさんの車に乗り込むと、すっかりホッとしてしまい、気持ちが軽くなりました。ゆかりさんが居れば、さくちゃんを襲ってしまうことも無いでしょう。  車の中では、ゆかりさんが私の母から聞いたという、私の子供時代の話をさくちゃんにしていました。 さくちゃんが、とても楽しそうに聞いていたので、良かったと思いました。多少恥ずかしい気持ちになりましたが…。  ゆかりさんに会って安心したせいでしょうか、しばらくすると、私はとても眠くなってしまいました。 眠りに落ちる前に、さくちゃんの手が私の手を握りしめたのがわかりました。  遠くの方で、ゆかりさんとさくちゃんの声がします… 「あら、はるかさん、ねちゃったのね?」 「そうみたいです。毎日、俺の面倒を見てくれてて、疲れているんだと思います…」 「あの…所で、どんな治療するのかご存じですか?」  俺はゆかりさんに聞いてみた。 「そうねぇ…私もよくはわからないのだけど、何か特効薬があるみたいなの」 「そうなんですか…」  あぁ、良かった。これでさくちゃんも私も、心配する事が無くなりそうです――。 「あら? さくらさん、あまり嬉しそうでもないのね?」 「いえ、そんな事ないですけど…」  さくちゃん…さくちゃんは一体どんな顔をしていたのでしょう?  その後、私は深い眠りに落ちてしまい、さくちゃんが何を話したのか、わかりませんでした。

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