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side さくら 「最初のころは、早いところ治療してもらって、怜に家から出て行ってもらいたいと思っていたんです。だから、ちょっと意地悪して、怜に家事をやってもらったりしていたんです…」 「あら、そうだったの…。でも、そうよね。突然血を吸われてしまったんですものね」 「はい…でも、一緒に生活して、怜の優しさに触れているうちに、俺、怜とずっと一緒に居たいって思い始めてて。治療してもらうまでじゃなくて、これからもずっと…」 「はるかさん、優しいものね」  ゆかりさんが、うんうんと頷いた。怜は昔からずっと優しいんだ…。 「それが心地よくて――」 「そうね。わかるわ…」  ゆかりさんが「うちの人もそうだったわ」と呟いていた。俺はその時、その言葉の意味を深く考えていなかった。 「それで…同性にこんな気持ちになってしまうのって、おかしい事だと思われるかもしれないんですが…。 正直言って、俺も今まで同性ににこんな気持ちになったこと無かったんです。だから、もしかすると、治療が済んだら、この気持ちは消えてしまうのかも知れない…。でも今の俺は、怜にずっとそばに居て欲しいって思ってる。…俺がそんな事言ったら、彼は迷惑かもしれない…だけど、俺は…」 「さくらさんは、はるかさんが好きなのね?」  ゆかりさんがそう言った。とても簡単な言葉なのに、俺はなかなか言えなかった…。 「はい…その…いつの間にか、怜への思いが大きくなってて…でも、怜には言えなくて…」 「そうなの…そうね…治療の後、さくらさんの気持ちがどうなってしまうか、私にもわからないの。でも、今のさくらさんにとって、その想いは、本物なんだと思うわ。治療が終わった後に、その気持ちが友情として残るか、本当の愛情だったのか、はっきりわかるんじゃないかしら…」 「…そうですね…・」  もしかすると、この気持ちは友情になってしまうのかも知れない。急に夢から覚めたように、『怜を愛してるって?、俺がそんなこと言うわけ無いじゃない…』って…。  でも…この気持ちが本当に愛だとしたら…俺はどうすればいいんだろう? 「さくらさん?」 「え?…はい」 「1人で考えるのは止めた方が良いと思うわよ。後で、はるかさんにキチンと気持ちを伝えてみたらどうかしら? それで、今のはるかさんの気持ちも聞いて、その先のことは、それから考えた方がいいんじゃない? 治療してみないとわからないって事実をお互いに共有しておいた方が良いし」 「…はい…そうですよね」  そうなんだ…。自分だけで考えていても、どうにもならないんだ。友情になってしまうか、愛情のままなのか、わからないけど、今の気持ちを怜に話しておこう。  ずっとそばに居て欲しいと思っているって。

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