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side 怜
食器の片づけが終わると、さくちゃんに先にお風呂に入ってもらうことにしました。
その間、私は居間でゆかりさんと話をすることにしました。
「元樹ったら、ずっと、はるかさんに『お兄ちゃん』って甘えてたのに」
「仕方が無いですよ。色々な時期がありますから」
「ごめんなさいね…」
ゆかりさんの話によると、私があの町を出て行ってから、元樹君が急に私の話をするのを嫌がるようになったのだそうです。ゆかりさんは「はるかさんが居なくなって、寂しかったからなのかしら…」と言っていましたが、先ほどの私に対する態度からすると、どうもそうではなさそうです。
「所で、はるかさん、今、血が欲しいって思ってる?」
ゆかりさんにそう聞かれました。
「いえ。でも、いつ欲しくなるか、分からないんです…。欲しくなると、自分の意志とは関係なく、本能だけで動いてしまうようなので、それが心配なんです…」
「そう…それじゃあ、やっぱり、さくらさんには、部屋に鍵を掛けてもらいましょう」
「はい。それから、私がノックしても、絶対にドアを開けないように伝えなくては」
正気を無くしている時の私は、血を吸うだけではなく、さくちゃんを傷つけてしまう可能性がありますから――。
「はるかさんがお風呂に入っている間にでも、私から話しておくわ」
「宜しくお願いします」
「そういえば、さくらさんとは、この先も一緒に暮らす予定なの?」
しばらく、パッチワークの話や、さくちゃんとの出会いの話などしていたのですが、その流れでゆかりさんが聞いてきました。
「えぇ。水沼先生に治療していただいた後も、2人が同じ気持ちでしたら、一緒に暮らしたいと思っています」
「そう…」
「でも、さくらちゃんが、色々不安に思っているようなんです。私が吸血鬼だから…命を全うする時期も全然違いますし…」
今は考えないようにしようと思っていますが、実際に一緒に暮らすことになるとしたら、様々な問題があるかも知れません。
「それなら、さくらさんに吸血鬼になってもらったら? 主人が私をそうしたように…」
「え? ゆかりさんは…人間だったんですか?」
「そうよ…」
一瞬、ゆかりさんの顔が曇ったような気がしました。
「あの…ゆかりさんは、水沼先生と結婚されて幸せですか?」
「そうね。幸せと言えば、幸せよ。今までに色んな仕事や趣味をやってこれたからねー。でも、水沼は家に居ることが少ないから…ちょっと寂しい時もあるわね」
「そうですか…」
さくちゃんだったら、どうするでしょうか? そして、私はどうしたいと思っているのでしょう?
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