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113 rei & saku

side 怜 「さくらちゃんと相談してみます。彼がそこまでして私の傍に居たいと思ってくれるのか、わかりませんので…」  ずっと一緒に居たいけれど、今のままの私達では、それも無理な話です。 さくちゃんは年をとり、いつか私の前から居なくなってしまう…。考えたくはありませんが、人間のさくちゃんと生活をするとなると、それは避けようの無い事実なのです。 「そうね。とにかく治療が終わらないと、わからないけれど…。2人が幸せになれるように、考えていかないとね」  ゆかりさんが静かにそう言いました。 「はい」   「それにしても、さくらさんって、ホントに可愛らしい人なのね」  ゆかりさんが、急に何かを思い出したように笑顔を向けました。 「はい。今までには、出会った事の無いようなタイプの人なんです。最初の頃は、綺麗な方なのに、口が悪くてびっくりしたのですが――」  私は出会った頃の事を思い出して、クスっと笑ってしまいました。 「あら、そうなの?」 「ええ」  それからしばらく、さくちゃんとの出会いや、一緒に過ごした日々の事を聞いてもらいました。 さくちゃんの話しをしているうちに、私はとても幸せな気持ちになりました。 「はるかさんのそんな顔見るの、初めてかもしれないわ。ホントに幸せそうね」  夢中で話していると、ゆかりさんが笑いながら言いました。 「え…?」 「昔は、もっとクールなイメージだったわよ」 「そうですか…?」 「今のはるかさんの方が、素敵よ」 「…ありがとうございます」  自分でも不思議でした。男性であるさくちゃんが、ここまで私の心をとらえるなんて…。 私のこの気持ちが嘘であるとは思えませんでした。もしかすると、さくちゃんの気持ちだけが元にもどってしまうかのもしれません。  お互い元の生活に戻った方が良いと、頭の片隅では思っているのですが、今の私の心は、さくちゃんを離したくない気持ちでいっぱいでした。  さくちゃんは、今まで会った誰よりも愛しい…私の大切な宝物です。 side さくら  風呂を上がり部屋でくつろいでいると、誰かが階段を上がってくる音が聞こえた。 いつもは長風呂なのに出てくるのがやけに早いとは思ったけれど、怜かもしれないと思いドアの傍に行って耳を澄ましていた。  だけど聞こえてきたのは、ゆかりさんが元樹を呼ぶ声だった。 元樹の不機嫌な声とドアが開閉する音が聞こえた後は、何も聞こえてこなかった。  どうやら、俺の向かい側の部屋が元樹の部屋のようだ。  俺はドアの傍を離れ、部屋の隅に置いてあるテレビのスイッチをいれると、ベッドに横になり、怜の事をボンヤリ考えていた。  ベッドに転がり、テレビの音を聞きながら天井を見上げているうちに、無意識に指で唇を辿っていた。 微かに触れ合った唇の感触を思い出すうちに、体が熱くなっていく。 俺は堪らず、シャツの中に手を滑らせていた。  怜…愛してる…。  つけっぱなしのテレビからは、今日のニュースを淡々と読むアナウンサーの声が聞こえていた。

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