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side さくら  食事の後は、当り障りの無い会話をしながら、ランチョンマット作りの続きをやっていた。  こんなにのんびりしながら何かをやるのも久しぶりかもしれない。 1人だった頃は、休みの日と言えば、寝て過ごすしていたし…。怜が来てからも、俺は大体ダラダラしてる時のほうが多かったから。  俺の横ではゆかりさんが、大きな作品を作っていた。どうやらそれは、何かの絵になっているようで、食卓の横の壁に飾る為に作っているそうだ。 「怜は…怜は人を騙したりするのかな…?」  話が途切れた時、急に元樹の言葉を思い出し、その言葉が口を付いて出てしまった。 「騙す?」 「あ、いえ…イタ…」  自分で言った言葉に動揺しているのか、左手の人差し指を針で刺してしまった。ちょっと血が出たけど、この位の傷なら舐めておけば治るだろう。 「そんな事あるわけ無いですよね。怜は本当に優しくて…お人よし過ぎるかも…」  ゆかりさんの言葉を聞くのが恐くて、慌てて自分で答えを出してしまった。怜が人を騙すなんて、あり得ない。 「あら? さくらさん…ちょっと左手を見せて」  急にそう言われ、何だろう? と思いながら、ゆかりさんの方に手を差し出した。 「あ…」  針で突付いてしまった指先に、小さな赤いビーズの玉のような出血があった。 「…そうか…忘れてた…」  傍に置いてあったティッシュを取り、その血を拭き取った。だけど、拭いたと同時に、再び小さな赤い玉が出来た。 「ちょっと待っててね。薬取ってくるから」  そう言ってゆかりさんがその場を離れた。 -さくらちゃん-  その時、俺の名前を呼ぶ怜の声が、聞こえたような気がした。 「怜?」  周りを見回したけど、怜が居るわけがない。ただの空耳だったのだろうか? -さくちゃん- 「怜…どこに居るの? って、居るわけ無いじゃん」  自分で言っててバカらしく思えた。会いたいあまりに、怜の声が聞こえたような気がしたのだろうか? -さくらちゃん、怪我をしたのですか? 血の匂いがします- 「え? 怜! どこに居るの?」 -考え事しながら、針仕事するのは危ないですよ。気をつけて下さいね- 「どうして分かるんだよ? どこに居るんだよ…なぁ、怜」  立ち上がって、部屋の中をキョロキョロ探し回っていると、ゆかりさんが薬を持って、戻って来た。

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