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side さくら  ゆかりさんと2人で夕飯を食べてた後、片づけを手伝い、少しテレビを見てからフロに入った。  湯船に浸かりながら、手首の傷口を眺めていた。つける前は緑色だった薬が、乾くと透明の膜のようになって傷を覆っていた。今は血は出ていないけれど、薬が乾く前に滲み出た血が固まっていて、膜の中に赤い線を何本か作っていた。  それから、さっき針で刺してしまった指先の傷を見てみると、透明の膜の中に、小さな赤いビーズが1つ入っているような感じで、何だかちょっと綺麗に見えた。 「ホントに不思議だよな…」  だいたい、今のこの世の中に、吸血鬼がいるって言うのも不思議だし、その吸血鬼に、それも同性の怜に恋しちゃうなんてなぁ。 「ホントに仮死状態なのかよ…?」  今のこの状況はもしかしたら、夢? 一瞬そう思ったら、胸がキュッと締め付けられる思いがした。  はぁ…重症。怜が恋しくて仕方が無い。  ちょっと前の俺だったら…怜に血を吸われる前の俺だったら、誰かに恋をするなんて、殆ど意味の無い事だった。恋人が居たこともあるけれど、その恋人と夢をわかち合おう…なんて、そんな気になったことも無かった。  相手は男だけど、俺も普通に恋が出来るんだってわかって、少し安心した。ずっと同じ部屋に居ても、息苦しさを感じる事もなく、一緒に過ごしたいって素直に思える。 早く怜と2人で家に帰りたい。帰って、これからの事をゆっくり相談したい…それから…怜の隣で眠りたい。  手首の傷にキスをしたら、愛しい怜の声が聞こえたような気がした。  -もうすぐですよ。一緒に帰りましょうね-  フロに入った後、着替えてからすぐにまた怜の部屋に来た。 眠る前に怜の顔を見て、安心したかった。 「怜、来たよ」  掛け布団の中に手を突っ込んで、怜の右手を握り締めた。 「冷たいな…怜」  手を繋いで寝顔を見つめていたら、だんだんと身体が熱くなってきて、自分でも困ってしまった。  深い深いキスがしたい、怜に抱きしめられたい…そして、怜と1つになりたい…。 そう思うと、身体の奥の方が疼いて仕方が無かった。 「もう…。さっき抜いてきたんだけどな」  自分の下半身に手を伸ばしながら溜息をつく。このまま、怜の手を握り締めて、怜の事考えながら…。  ティッシュペーパーを取ってきて、自分の横に置き、目を瞑り下着の中に手を入れようとした。

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