128 / 169

128

side さくら 「俺はね…怜が好きだよ。俺のこと大切にしてくれるし、一緒にいて安心するんだ。今までにそんな相手居なかったんだよ。同じ部屋にずっといて、邪魔だって思わなかった奴」  俺は正直な気持ちを元樹に話した。 「ふーん…。セックスも上手いしねこの人」  元樹はそれを真剣に聞こうとは思っていないようだ。 「…それは、知らない。俺、怜とセックスしたことないから」  俺がそう言うと、元樹が驚いたような顔をした。 「やっぱホントだったんだ?」 「何が」 「さくらさんとこの人が、まだセックスしてないって事」 「嘘言ってどうするんだよ。お前に嘘つく理由なんてないし」 「…ただ驚いただけ。雨宮遙が一緒に住んでる奴とセックスしないなんて、考えられない」 「俺が男だからじゃない? きっと女だったら、もう遣られてるかもね」  元樹がもう一度、信じられないと言うような表情をした。 「良くわからないな…さくらさんと雨宮さんの関係って」 「わからなくても良いよ。早く先生に治療してもらって、怜と帰るんだ。そこから始まるんだよ。俺たちの生活がね」 「そ…。でもさ、親父に治療してもらったら、雨宮さん、さくらさんの事忘れちゃうかもよ?」 「…そんな事…無いと思う」 「それにさ、さくらさんだって、雨宮さんのこと好きじゃなくなるかもよ?」  優しそうな表情をしながら、酷い事を言ってくる。そんなこと絶対無い…そう思いたいけど。 実際の所は、先生でもはっきりわかっていないようなのだ。怜と話が出来ない今、そのことを考えるのが辛い…。  怜…お前が、俺たちのこれからの生活の事、考えてくれるって言ってたのに…。 「…お前には、そんなこと、言われたくないよ。何でそんな事言うんだよ? 俺、不安で仕方が無いのに。 一体、俺の何が気に食わないんだよ? 怜のことも、どうしてそんなに悪く言うんだよ…」  元樹を睨みつけながらそう言った。元樹は、俺の目を見て、フッと笑いながら優しく肩を抱いてきた。 「ごめん、さくらさん。俺、さくらさんの事、気に入ったんだ。さくらさんが雨宮さんの味方するから、ちょっと苛めたくなった」 「ったく…何なんだよ、それって? あのな、いくら気に入ってくれたって、俺は怜以外のこと考えらんねーからな」  からかわれているいるようで、ムッとしてそう答えると、元樹が俺の頬にパッとキスをした。 「おい…やめろって!」

ともだちにシェアしよう!