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side さくら
「ねぇ、さくらさん、俺、明日仕事が休みなんだ。一緒にどこかに遊びに行こうよ」
元樹が突然そんなことを言いだした。
「はぁ?」
俺は一瞬何を言われたのか良くわからなかった。
「遊びに行ってくれたら、雨宮さんに酷いこと言うの止めるよ。雨宮さんのことは気に入らないけど、何も言わないようにするから。ね、いいでしょ? 俺、さくらさんとデートしてみたい」
元樹の考えている事がわからなくて、答えに困ってしまった。だけど考えてみたら、治療が終わってからすぐに家に帰れるかどうかわからないんだ。怜が目を覚ました後、また、元樹と険悪な状態になるのも、良い気持ちがしない。
明日一日付き合ってやったら、大人しくしてくれると言うなら…。
「わかったよ。明日だけだぞ」
「やった!」
元樹が子供のような笑顔を浮かべた。
怜に嫌味を言ってる時は、なんてキツイ目をした奴なんだろう? って思っていたけど、こうしてみると、まだまだ子供っぽい感じだ。
「なぁ、元樹?」
「嬉しいな…呼び捨てにしてくれるんだ」
「え? そっか、ごめん。俺、大体の奴、呼び捨てにしちゃうんだ」
「…なんか、さくらさんって、ホントに顔と言葉使いのギャップがあって…」
「あ、それ、怜にも散々言われた。黙ってると良いって」
「可愛らしくて、好きだよ。そういう所も」
肩に手を回して、耳元で囁かれた。ゾクッとして、身体の奥がわずかに疼いた。
「あのな、そういうの無し。頼んだよ」
「わかりました。それじゃ、明日、楽しみにしてて下さい。俺、車出しますから、ドライブ行きましょう」
「あぁ」
元樹が怜の部屋から出て行った。
「怜…ごめんな。明日、あいつに付き合ってやってくる。一緒に出かけらた、怜のこと、悪く言わないでくれるっていうから」
怜の手を再び握り締めた。その途端、再び俺の体の一部に、確実に血が集まり出した。
握っている手をいったん離し、ドアの鍵を閉めて、もう一度怜のそばに戻った。
胸はドキドキするし下半身は熱を持ってるし…。
こうなったら、さっきの続きをするか―。
「な…いいだろ? 怜」
汚れるといけないと思い、俺はスウェットと下着を脱ぎ捨てベッドの横に腰かけ、片手で怜の手を握り締め、もう片方の手は熱くなり掛けている自分自身に手を掛けた。
「ん…」
自分で触ってるのに、怜に触られているような気分になり、とても興奮した。
「あ…怜」
頭の中で俺は怜に抱かれていた。甘い愛の行為に、俺はあっという間に昇りつめ精を放った。
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