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side さくら 「あのさ、俺、ちょっと彼女と会ってくるよ。だからお願い、さくらさんから母さん達に伝えておいて。今日中には帰ると思うって」  家の前に着いた途端、元樹がそう言った。 「今から?」  元樹は直感で動く奴みたいだな…ちょっと心配なところもあるけれど…、それが、若さってやつなんだろうか? いや、でもまぁ…本当は俺よりずっと年上だと思うけれど――。 「うん。今はまだ俺が吸血鬼だって事、彼女に話せないと思うんだ…。だけど、少し真剣に彼女との将来を考えてみたくなったんだ。そう思ったら、すごく彼女に会いたくなっちゃってさ」  元樹が少し興奮気味にたようにそう言った。 「まぁ、いいんじゃない。真剣に話し合って来いよ。でもさ、ちょっとくらい家に顔出してからにしたら? 親父さんに合うの、久しぶりに会うんだろ?」  俺がそう言うと、元樹が首を傾げた。 「んー…ちょっと、顔合わせ辛い…俺、我が儘言ったの、絶対、親父に話が行ってるから…」  元樹が色々言っているうちに、玄関が開いてゆかりさんが外に出てきた。 「やっぱり帰ってたのね。お帰り元樹、どうだったの今日は?」  ゆかりさんがそう言いながら車の近くまで出てきた。 「うん…まぁ――」  元樹が言葉を濁していた。自分のやったことを思い出してしまっているんだろう、素直に楽しかったと言えないでいる元樹を見て、俺は慌ててフォローを入れた。 「とても楽しかったですよ。元樹が楽しそうな所を、色々調べてくれてたみたいで…」  俺がそう言うと、ゆかりさんが少し驚いたような顔をした。 「そうなの? 元樹が?」 「そうなんです。ガラス工芸とか、面白かったですよ」  照れて下を向いたままの元樹の代わりに俺が答えた。 「びっくりだわ。元樹もそんなこと出来るようになったのね」 「…まぁね、もう大人だし」  褒められたことが嬉しかったようで、元樹が少し顔を上げた。  本当は俺よりもよっぽど年上なんだと思うのだけど…。吸血鬼って、年を取るのも精神的な成長も人間よりもかなりスローペースなのかもしれない――。 「さ、家に入りなさいよ。お父さんも待ってるわ」  ゆかりさんが急かすようにそう言った。 「かあさん、ごめん。友達に呼び出されててさ、ちょっと出掛けてくるよ。父さんには明日ゆっくり会うから…」 「あら、そうなの?」 「うん、ゴメンって父さんに言っといて」  俺を車から下ろすと、元樹はもう一度車で出かけていった。 「元樹ったら…本当にしょうがない子ね…」  走り去ってしまった車を見届けながら、ゆかりさんがそう呟いていた。 「まぁ、あの子と父親なら、いつでも会えるから良いとして。とにかく家に入って、さくらさん。はるかさんと水沼が待ってるわ」

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