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side 怜 「頂きます!」  さくらちゃんの元気な声が聞こえました。私も少し食べておこうと思い、箸を取りました。 「あ…」  箸を持った途端、さくらちゃんの手が急に動きを止めてしまいました。 私は慌てて倒れそうになるさくらちゃんの身体を支えました。 「あら…さくらさん、可哀想に…」  ゆかりさんがテーブルの下に落ちた箸を拾いながら言いました。  今まさに、食事をしようとしたその瞬間、さくらちゃんが眠りに落ちてしまいました。まるで冗談のようで、可笑しいような、可哀想ような…そんな気分になりました。  さくらちゃんのことです、起きた時に、きっと文句を言うでしょう… 「怜、腹減った!」って。  不貞腐れて私に八つ当たりしているさくらちゃんの顔が、目に浮かぶようでした。 「どうしようかしら、2階に運ぶのは大変よね…。後で主人が戻ってからにしましょうか」  ゆかりさんの提案で、さくらちゃんをソファーに寝かせてあげました。 「さぁ、はるかさん、食べてしまいましょ」  食事を終えた頃、水沼先生がお帰りになられたので、事情を説明してから、2人でさくらちゃんをベッドに運びました。 「はるかさんもシャワー浴びておいたら?」 「そうですね。まだ少し時間がありますし…」 「ほら、早く行ってきた方が良いわよ」 「はい…」  後15分位で、眠くなるはずです。軽く汗を流す程度に浴びておきましょう。 シャワーを済ませ、服を着ると、ゆかりさんと先生に挨拶をしておこうと思いました。 「それでは…休ませて頂きます。目が覚めたら、知らせにきますので」 「あ、そうそう、はるかさんの布団、さくらさんの部屋に敷いておいたからな」  先生が当然のようにそう言って、ニッコリ微笑んでいました。 「え?」 「目覚めた時に、さくらさんの傍に居たいでしょ?」 「えぇ…まぁ」  ちょっと恥ずかしいような、くすぐったい気持ちでした。 「それじゃ、お休みなさい、はるかさん」  ゆかりさんがそう言ってニッコリ微笑みました。先生もゆかりさんの隣で嬉しそうに微笑んでいます。 「はい…ありがとうございました――」  何だか奇妙な気分でしたが、お二人に感謝するばかりでした。  階段を上がって、さくらちゃんの部屋のドアを開けました。さくらちゃんのベッドの横に、布団が敷いてありました。 私は布団に座って、さくらちゃんの寝顔を見つめました。 さくらちゃんは、静かに寝息をたてています。  なんて、綺麗な寝顔なんでしょう…。私は、初めてさくらちゃんに会った時の事を思い出しました。 「まさか、こんな事になるなんて、思ってもいませんでしたよ」  眠っているさくらちゃんに、口付けました。唇を離すと、眠っているはずなのに、もっととキスをとせがむように、唇を尖らせました。 「可愛いさくらちゃん…愛していますよ」  もう一度キスをしてから、自分の布団に入ります。 「お休みなさい…目が覚めたら、一緒に食事しましょうね」  布団に潜り込んだ瞬間、私は意識を手放しました。

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