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side 怜
「やっと目が覚めたのね?!」
カラフルな縄のれんを手でよけて入ってきたのは、ゆかりさんでした。
「はい、あの、おはようございます。キッチン使わせて頂きました」
2週間も眠っていたのですから、目が覚めたらすぐに水沼先生に声をかけるべきだったのかも知れない――と考えながら、ゆかりさんに挨拶をしました。
「どうぞどうぞ。今日は花屋はお休みだし、うちの人達はまだ起きないから大丈夫よ」
ゆかりさんが欠伸をころしながらそう答えました。
「すみません、起こしてしまいましたね」
「ううん。トイレに起きたら、声が聞こえたから来てみたのよ。それにしても、良かったわ。主人が2日って言っていたのに、全然起きる気配がなかったから」
「2週間も経っていたなんて、驚きました」
「そうよね。ちょっと主人を起こしてくるわ」
「すみません、皆さん寝ていると思ったので、起きたことお知らせ出来てなくて」
私がそう言うと、ゆかりさんは嬉しそうにニコニコしながらキッチンを出ていきました。
その時、さくらちゃんと私がしていた事を、ゆかりさんが知っているような気がして、顔が赤くなる思いでした。
「はぁ。美味かった! やっぱり怜が作ってくれたのは最高だよ」
あっという間にうどんを食べ終わったさくらちゃんがそう言って、満足そうに微笑みました。作ったと言っても、大した料理ではなかったのですが――。
「喜んでいただけて良かった。またこうやって、さくらちゃんの為に食事を作ることが出来て、私は嬉しいですよ」
思ったことを正直に伝えると、さくらちゃんが私を見て今にも泣き出しそうな顔をしました。
「もう…泣かすなよ…」
さくちゃんが照れたように口を尖らせました。
「さくらちゃん、泣かないで下さい。これからは私がさくらちゃんのそばに居て、家の中の事色々とやらさせて頂きます。何かあったら私が守ります。ずっと一緒ですから、安心してください」
さくらちゃんが悲しまないようにと思って言った言葉は、ますますさくらちゃんの涙を誘ってしまったようです…。
さくらちゃんは「うん、うん」と返事をしながら声を上げて泣き出してしまいました。
「あ、あの、さくらちゃん…」
私は慌ててしまい、泣きじゃくるさくらちゃんの身体を抱きしめるばかりでした。
「大丈夫だよ、怜……。俺、嬉しすぎて泣いてるだけだから。うれし涙だから……」
そう言ってから、さくらちゃんが『おかしいな、俺まだ涙もろいぞ…』と泣き笑いしていました。
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