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side さくら 「そうですね……。冷静さを失った私は、ベッドの上で一晩中さくらちゃんを鳴かせてしまったかもしれませんね」  怜の低い声とその言葉が、俺の下半身を直撃してしまった。 「家だったら良かったのにな…」  俺がそう言うと、怜がだんだん慌て始めた。 「どうしましょう…さくらちゃん」 「え?」  なんとなくわかったけれど、怜からのアクションを待ってみた。 「あの、えーと…ゆかりさんは?」  怜が切羽詰まった声で聞いてきた。そう言えば… 「ついさっき、先生と一緒に買いものに出かけたけど…」  そう答えて、今、この家には自分達しかいないことに気が付いた。  俺達は顔を見合わせると、手に手を取って無言で席を立ち2階へと急いだ。 「ゆかりさん、夕方帰ってくるって言ってた。夕食は作らなくて良いように、何か買ってくるって言ってたと思うんだ――」  そう言った途端、自分でもものすごくドキドキしてきた。 「元樹君は今日は帰らないって…」  階段を上りながら俺達は会話していた。多分、これから4時間くらい、この家には俺と怜だけだ――。  早朝からやったっていうのに、あれだけじゃ物足りないって思うくらい、体がお互いを求めていた。  俺と怜は部屋に入ると黙ったまま服を脱いでベッドになだれこんだ。 それから、じっくり時間をかけて、気持ちよくて濃くていやらしいセックスをした。 何度も昇り詰めるようなものじゃなくて、お互いに焦らしあいながら、快感が波のように押し寄せては引いていくって感じのじれったくて、愛が溢れるやつだ。  最終的に俺は怜によって、心も体もトロトロに溶かされ、しばらく動けないくらいになってしまった。  吸血鬼のセックスって…ヤバすぎる――。  セックスの後、俺はしばらく眠ってしまったようだ。目が覚めた俺は、身体の向きを変えて、怜を探した。 「あ…怜…」  怜ったら、汚れものを出さないようにって使った、自前のバスタオルを集めたり、そこらにまき散らしていた精液のついたティッシュを片付けていた。 「さくらちゃん、起きたんですね」  袋にティッシュを詰め込んでいた怜が、俺の方を向いて爽やかに微笑んだ。 「ゴメン…そんなことまで――」 「良いんですよ。さくらちゃんは動けないでしょ?」  さらっとそう言ったけど、怜は大丈夫なのか? かなり体力使わせたような気がするんだけど――。 「…まぁ…。お前の体力ってすごいな」 「えぇ…。さくらちゃんの精液を頂いたら、なんだかすごく元気になりましたよ。毎日頂くと健康が保てそうな気がします」  怜の言葉を聞いて、俺は思わず吹き出してしまった。俺の精液を初めて口で受け止めた時、むせて吐き出しそうになってたのに、飲み込んだ後には「とても美味しいですね」なんて言ってたな…。 そんなことを真面目に言ってくれる怜が、ちょっと可笑しく、そして、とても愛おしかった。  人によって精液の味に違いがあるかどうか、わからないけど…俺の経験上、精液なんてとても美味しい代物ではなかったと思うんだけど――。

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