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side さくら
俺も怜と一緒に片付けをしようと思い、ベッドに起き上がろうとした。
「あ、さくらちゃん、あの…」
その時、俺の方に向いた怜が、ティッシュを数枚取ってかさねると、慌てて俺のケツにあてがった。
「おい、怜?!」
「あの、私のが…出てきますから、たぶん…」
そう言えば、最後は生でやったんだ。すっげー気持ちよくって…そっか、もしかしたら俺は眠っていたんじゃなくて、気を失っていたのか――?
俺は怜があてがってくれたティッシュでケツをおさえながら起き上がろうとした。
「もうすぐ片付けは終わりますから、終わったら一緒にシャワーを浴びましょう」
怜がそう言って、俺に横になっているようにと言った。
「うん。わかったよ」
俺はティッシュを当てたまま、精液が出てこない体勢でベッドに横になった。
ちょっとマヌケだよな、今の俺――。
でも、そんなことを考えているこの瞬間さえ幸せだって感じる――そう思っていたら急に涙が溢れてきた。
「さくらちゃん…?」
バスタオルとゴミの袋をドアの前に置いてから、こちらを振り向いた怜が俺の涙を見て、心配そうにベッドのそばに来た。
「大丈夫だよ。すっげー幸せだって思ったら、涙が出た。しかも右目だけだぜ? なんか不思議だよな」
俺がそう言うと、怜がニコッと微笑んだ。
「右目からの涙は、嬉し涙なんだそうです。良かったです、右目からの涙で…」
怜がそう言いながら、俺の右目から溢れ出た涙を指で拭ってくれた。
「へー、そうなんだ?! じゃ、左目からの涙は?」
いつの間にそんな情報を得たんだよ? って言うか、その手の話を色々知っていそうだよな、怜って――。
「左目からの涙は、悲しい涙なんだそうですよ」
「ふーん」
じゃあ、両目から流れてる涙はには何なんだよ? と思ったけど、今はそういう話題はふらないようにしてこうか。
片付けが終わると、怜は俺をお姫様抱っこして2階にあるシャワールームに連れて行ってくれた。
「下宿していた人達が使っていたシャワールームを使えるようにしてあるわよ」って話を、さっきゆかりさんに聞いていて良かった…。怜ったら、俺を抱き上げた状態で階段を下りる気まんまんでいたんだ。それはちょっと危ないだろ? って焦ってしまった…。
シャワーを浴びた後、俺達は服を着たままベッドで抱き合っていた。セックスをするんじゃなくて、キスしたり、抱きしめあったりして、俺はそれだけでもとても満ち足りた気持ちになった。
そして、怜の腕の中でウトウトし始めたころ、ゆかりさんと先生が帰ってきた音が聞こえた。
「さくらちゃん、ゆかりさんと先生が帰ってきたみたいですよ」
「そっか。うーん…眠いなぁ…」
俺は眠くってボンヤリしたまま返事をした。
「もし眠かったら少し寝ていてはいかがですか? 私はちょっと顔を出してきます」
そう言って怜がベッドから出ようとした。
俺は急にこの間の事を思い出し、慌てて布団から飛び出した。
「うん、大丈夫、俺。腹も減ってるし…」
眠くても、ちゃんと食事をしてから寝よう――俺は強くそう思うのだった。
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