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side さくら
夕食が終わった後、ゆかりさんと先生は買ってきた組み立て式の棚を作り始めた。作業用のテーブルのそばに置いて、裁縫道具等を収納するんだそうだ。
そろそろ、花屋のほうは元樹にまかせることにして、ゆかりさんはパッチワークの教室を開こうと思っているんだとか
俺がパッチワークをやっているのを見ているうちに、年齢も性別も様々な人たちが参加出来る雰囲気の教室を開きたいって思ったんだって。
ゆかりさんはいつも前向きで良いなって思った。
俺は部屋に戻って、店のママに電話をかけることにした。怜は電話の邪魔になるといけないので、しばらくゆかりさん達の手伝いをしていると言っていた。
そばに居てくれても良いのにな…と思ったけれど、そう言うところが怜の良いところだと思うので、電話が終わったら迎えに来ようかな――。
「あら、さくらちゃん、体調はどう?」
電話をかけてきた相手が俺だとわかると、ママが急に野太い声を出した。
「だいぶ良くなったんだけど、お医者様からもう少し様子を見た方が良いって言われたの」
ママと話始めると、久しぶりにお店で働いてる時の『さくら』の口調になった。不思議なものだな――と俺は頭の片隅で思っていた。
「まぁ、そうなの…。じゃあ、まだお休みね。あ、そう言えば、利一のオヤジさんからお見舞いのお金頂いたのよ、さくらちゃんに渡して欲しいって」
俺は利一の名前を聞いて、ブルーな気持ちになった。
「あの、私、見舞金なんていらないわ。利一に関わるの、もうごめんよ」
「そう言われても……どうしようかしら? 返すのも失礼かしらね…」
「じゃあ、お店の為に使ってよ。修理するところとかあるでしょ?」
俺がそう言うと、ママが「えー、良いのかしら。本当に貰っちゃうわよ」とはしゃいでいた。
「うん、使っちゃってよ、ママ」
「ありがとう、さくらちゃん!」
その後、ママはしばらく、最近起きたお店での出来事を話してくれた。
「あら、そろそろお店に出なくちゃ。じゃあ、さくらちゃん、体に気を付けてね。1ケ月でも2か月でもゆっくりしてきなさい。戻れるようになったら、連絡頂戴ね」
ママはそう言って、俺の返事も聞かないで電話を切ってしまった。
相変わらず忙しい人だな――。
そう言えば、利一の親父がよこした見舞金…金額は聞かなかったけれど、結構な額だったのかな。口止め料とか込みなんだろうから……。
まぁ、俺はもう利一には一切かわりたくないし、そんな金は受け取りたくないから、どうでも良いんだけど――将来、自分達の店を開くときの資金に出来たかな…とちょっとだけ思った。
電話も終わったことだし、怜を迎えに行って一緒に寝ようかな。今日はもうやらないよ、やり過ぎて…疲れたかも――。
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