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第35話 彼に気持ちを傾けないで
「言いたくなかったら、無理に言わなくてもいいんだけど……」
彰に背を向けた状態でぼーっとベッドに横たわっていると、背後からためらいがちな声がした。
「さっきの人たち、知り合いなの?」
「うん……。高校の時の、クラスメイトたちなんだ。前に話したろ? いじめを受けてたって。俺に絡んできてたのは、そのリーダーだった奴。まあ、さっきのメンバー、全員じゃないけど……」
すると彰は、一瞬押し黙った。
「――ひょっとして、初恋の人って、あの中にいた?」
俺は、ドキリとした。
「一番左端にいた人じゃない?」
「な、何でそれが……」
「分かるよ」
彰は、俺を背後からきゅっと抱きしめた。
「文月九段と雰囲気が似てるってのもヒントだったけど、昴太、その人のことをすごく切なそうに見てたから」
――自分がやり玉に挙がってるってのに、俺のことを見てたのかよ……。
俺は愕然とした。
「昴太」
彰は、俺を抱く腕にぎゅっと力を込めると、真剣な声色で俺の名を呼んだ。
「彼と再会したからって、そっちへ流れたりしないでね?」
「ばっ、馬鹿! そんなわけ無いだろ。大体あいつは、ノンケだし……」
俺は焦って否定したが、彰は苛立たしげに俺の言葉を遮った。
「そういうことじゃなくて。昴太自身が、彼に気持ちを傾けないでってこと。昴太は優しいし、お人好しなところがあるから……。高校時代、彼にどんな目に遭わされたか、忘れちゃダメだよ。人の本質なんて、そうそう変わるもんじゃないんだからね?」
「今さら、そんなことしねえよ……」
ふてくされたように言い返しながらも、俺は内心、ドキリとしていた。ずっと拓斗に未練があったのを、見抜かれた気がしたのだ。それを隠すように、俺はわざとまぜっかえした。
「そんなこと心配するなんて、お前って結構、やきもち焼きなんだな?」
「そりゃ、昴太に本気だからね」
彰はちょっと笑うと、俺の胸の突起を軽くつまんだ。
「あっ。止めろって……」
「本当に、胸弱いよね……」
くりくりと転がされて、俺の躰は再び昂ってくる。
「あっ。ああっ。んっ、やっ……」
すでにまともな言葉を紡げなくなっている俺の後ろに、彰の指が滑り込む。
「もういっぺん、いいよね?」
俺の返事を待たずに、彰は俺の脚を割り開いた。
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