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第34話 ずっと前から恋人だったみたいだ

 その瞬間、前触れも無く指が引き抜かれた。 「もういいでしょ? それに、イクなら僕のでイって欲しいしね……」  彰は微笑みながら、再び勢いを取り戻した俺のそれを軽く撫でる。そのまま奴は、俺の身体を抱き起した。 「な、何……?」 「後ろ、向こうか」  言いながら彰は、俺を四つん這いにさせる。 「バック、嫌だ……」  相手の顔が見えない体勢は、苦手なのだ。しかし彰は、あっさり却下した。 「今の君には、その方が負担が少ないと思うよ」  ――エッチすんの久々だって、見抜いてるのか……?  あれこれ考える間もなく、後ろに彰のものがあてがわれる。  ――熱いし、すごく硬い……。  彰は、俺の腰をしっかりとつかむと、一気に押し入ってきた。 「ああーっ」  その瞬間、目もくらむような快感が全身を走り抜けたかと思うと、俺は再び達していた。 「――挿入()れただけで?」  彰の呆れたような声が頭上から降ってくる。俺は恥ずかしさと悔しさで、泣きそうになった。  ――何だか、どんだけ飢えてたんだって感じだよな……。 「可愛い」  意外にも彰は、嬉しそうな声を上げた。奴は俺の背中にちゅっとキスを落とすと、やおら動き始めた。 「あっ、んっ、やだ……」 「イヤじゃないでしょ?」  そう、本当は、嫌じゃない。彰は、的確に俺のポイントに狙いを定めて突いてくる。  ――まるで、ずっと前から恋人だったみたいだ……。  混乱してるのか、そんなアホな考えが俺の脳裏をよぎる。 「あっ、あっ、ああっ……」 「昴太……。僕の名前、呼んで……?」  激しく腰を打ち付けながら、彰が囁く。 「あ、あき……」  呼べと言ったのは奴なのに、俺が喋ろうとする度にイイ所を擦りやがるから、俺の口から漏れるのはただの喘ぎ声になってしまう。 「昴太……。好き。愛してる……」  抉るように突かれ、俺はもう、わけが分からなくなってきた。目の前に、チカチカと火花が散る。 「あっ、あきら……っ」  ようやく奴の名を口にした瞬間、俺は欲を放出していた。一拍遅れて、俺の中に熱いものが注ぎ込まれる。どさりと倒れ込んでくる彰の重みを受け止めながら、俺は不思議な幸福感を味わっていた。

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