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第42話 計画通りって何だよ

 夕飯を食べに来ないかというメッセ―ジを送ると、彰からはすぐに電話がかかって来た。 「それより、僕の家に来ない?」 「いいけど、何で?」 「見せたい棋譜があるというのもあるんだけど……。改めて、匠を紹介したいんだ。彼も昴太に会いたがっていてね。この前は、僕の恋人だとは知らずに不愛想な対応をしてしまったと言って、すごく恐縮してるんだよ」 「そうなんだ」  俺は、あの時の彼のトゲのある口調や、好戦的な目つきを思い出した。  ――でも、会いたいって言ってるってことは、それほど悪い奴じゃないのかもな。  行くと告げて電話を切ると、俺は母親が送ってきた荷物の中から、手土産にする菓子を選び始めた。 「風間さんですね? 改めまして、彰の弟の匠といいます」  翌日の日曜の午後、クッキーを持って彰のマンションを訪れた俺を、天花寺匠はにこやかに出迎えてくれた。年齢は、彰より四つ下の、二十歳だそうだ。 「先日は、失礼しました。兄が付き合っている人とは知らずに、つっけんどんな態度を取ってしまって……。兄と来たら、僕には全然話してくれないものだから」 「いやいや、全然気にしてないですよ」  俺は、内心ほっとしながら手を振った。  ――良かった。第一印象は最悪だったけど、今は歓迎してくれてるみたいだ……。 「あの頃は、まだ付き合う前だったから。計画通りゲットしたら、匠にも紹介するつもりだったよ」  けろりと言う彰を、俺は軽く睨んだ。 「何だよ、計画通りってのは……」 「あれ。ということは、兄の方からアプローチしたんですか?」  匠さんが、意外そうな顔をする。 「そりゃもう、先回りに先回りを重ねてね。猛攻撃したんだよ。碁と同じかな」  彰が冗談めかして答える。 「へえ……」  一瞬、匠さんの目がきらりと光ったような気がした。しかしそれも束の間で、彼は再び笑顔に戻った。 「じゃあそろそろ、お邪魔虫は退散しますね。風間さん、クッキーありがとうございました。では、ごゆっくり」  匠さんは遠慮したのか、俺たちにお茶を入れてくれると、さっさと自室に入って行った。彰は、俺を自分の部屋へ連れて行った。  

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