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第43話 仲いいんだな
「二人が打ち解けてくれたみたいで良かった」
彰の部屋で棋譜を広げていると、奴はそんなことを言い出した。
「匠、すごく人見知りだからね。他人と関わるのが苦手で。小さい時は、ずっと僕の後ろに隠れているような所があったよ」
――神経質そうな奴だもんなあ。
「でも、昴太のことは気に入ったみたいだね。仲良くしてやってくれる?」
うん、と俺は頷いた。
「ずっと兄弟二人で暮らしてんのか? 確か、妹もいるんだよな?」
「葵ね。あの子ははねっ返りだからなあ……。碁に反発して、勝手に家を飛び出して、将棋の師匠の元へ押しかけ弟子入りしてしまったんだよ」
彰が苦笑する。
「もっとも、家に反発するという点は、僕も同じでね。だから、プロ入りしたら、さっさと実家を出ようって決めてたんだ。最初は一人暮らしをするつもりだったんだけど、匠も家を出たいと言い出して。でも、彼は身体が弱いから、とても一人暮らしなんかさせられなくてね。だから僕が、一緒に住んでやることにしたんだ」
「仲いいんだな」
すると彰は、にやりとした。
「妬ける?」
「ばっ……馬鹿。誰が、弟相手に……」
とっさに言い返したものの、この二人は義兄弟なんだよな、という考えが俺の脳裏をかすめる。
「いや、俺は一人っ子だからさ。兄弟で仲良いのって、なんか、羨ましいっていうか」
「へえ、そうなんだ」
彰は、そんな相槌を打ちながら、碁盤の上に石を並べていく。大きくて男らしいのに、どこかしなやかさもある、綺麗な手。長い指が碁石をつまみ上げる仕草を見て、俺はふと、あのホテルでの一夜を思い出した。
――あの指が、俺の身体中を這ったんだ。そして、隅々までまさぐって……。
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