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第47話 代わりに病院へ連れてくよ
「匠さん? どうしました?」
俺は、焦って匠さんの傍へ駆け寄った。彼は、床にうずくまって苦しそうにしていた。声をかけても返事は無く、ただゼーゼーという呼吸だけが聞こえる。
――何が起きた?
さっぱり事態が呑み込めず、俺は慌てて部屋を走り出た。彰は、リビングで電話をしていた。合図を送ると、彰は受話器を置いてやって来た。
「彰! 電話中にごめん。でも匠さんが、大変なんだ!」
「何だって?」
彰は、血相を変えて部屋に飛び込んだ。倒れている匠さんを見て、彰は「また発作か」と呟いた。
「発作?」
「匠、喘息もちなんだ。早く病院へ連れて行かないと……。昴太、すまないけどタクシーを呼んでくれる? まだ電話が終わりそうにないんだ。ちょっと、仕事でトラブルが起きてて……」
――喘息の発作だったのか。身体が弱いって言ってたけど……。
「じゃあさ、俺が代わりに病院へ連れてくよ」
すると彰は、ためらいながらも頷いた。
「いいの?」
「ああ。かかりつけとか、あるのか? あっ、今日は日曜か?」
「大丈夫。そういう時は、いつもここへ行くから」
彰は俺に、救急病院の連絡先を書いたメモをくれた。
「あらかじめ電話してから行くといい。それからこれ、匠の鞄。保険証とか、一式入ってるから。世話をかけてすまない。僕もすぐ、後から行くから」
タクシーは、すぐに来た。俺は匠さんを乗せて、病院へ向かった。
タクシーの中でも、匠さんはずっと苦しそうにしていた。喘息の人なんてこれまで身近にいなかったから、どうしてよいか分からない。俺は、ただおろおろと見守るだけだった。
病院に到着すると、匠さんはふらふらしながら車から降りようとしたが、不意によろけて、俺にぶつかった。互いの鞄が地面に落ち、中味が散乱する。
「すみません……」
「ううん! 俺こそ、ちゃんと支えてあげてなくて、ごめん」
二人して取りあえず中味を拾い集め、俺たちは病院に入った。彰の指示で事前に電話しておいたおかげで、話はスムースに通じたが、すぐに診てもらえるというわけでもないようだ。俺たちは、人気の無い待合室で、落ち着き無く時間を過ごした。
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