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第59話 タイミングよく現れたよな
「陰謀? 洋一さんの……? どういうこと?」
すると彰は、もう一度ため息をついた。
「文月九段と綾瀬さんの仲は、噂になりかけていたんだよ。だから文月九段は、昴太と彼女が付き合っていると周囲に見せかける、カムフラージュを企んだんだ」
――そんな……。
でもそうだとすれば、全てが納得できる。新幹線もホテルの部屋も、手配したのは洋一さんだ。いずみさんの隣の指定席に、ツインの部屋。そして、俺の部屋番号を知っていたいずみさん。
「じゃあそれって、いずみさんも納得ずくってこと?」
「ああ。関係を続けるには、周囲をこうやって欺くしかない、と言いくるめたんだろうな。まったく、下種な男だ。そんな男の言いなりになる彼女も、愚かだけれど」
彰は、心底軽蔑したような表情を浮かべた。
「このホテルは、名人戦目当ての客が沢山泊まっている。『文月』の常連客も多い。君と彼女が目撃される可能性は高いが、文月九段はさらに周到な計画を立てた。常連客たちに匿名で、この時間にこのフロアに来れば面白いものが見られる、という噂を流したんだ。そして綾瀬さんに、その時間に君の部屋を訪問させる、というわけだ」
「最低だ……」
そこまでやるのかよ、と俺は洋一さんに激しい怒りを覚えた。
「さっき、写真の話もしてたけど、あれは?」
すると彰は、スマホを取り出した。
「彼女、昴太とのツーショットをSNSに上げてるんだよ」
「げっ。マジか!」
写真には、思わせぶりな文章まで添えられていた。これでは、カップルと思われて当然だろう。一気に疲れを感じた俺は、自分もベッドの上に上がると、胡坐をかいて座り込んだ。
「消せと言っても、文月九段に洗脳されている彼女が素直に聞くわけは無いだろうし、第一もう拡散されていた。だから、とっさにああいう嘘をついたんだ」
そこで俺は、根本的な疑問を口にした。
「で、どうしてお前は、それを知ったの? ていうか、タイミングよく現れたよな?」
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