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第67話 俺に何か隠してないか

 ノックをすると馨はすぐに出て来たが、何だかやけに不機嫌だった。 「悪い、今話せるか?」  恐る恐る話しかけると、馨は俺をぎろりと見据えた。 「お前の話の前に、聞きたいことがある」 「――何だよ」  いつになく強張った表情の馨を見て、俺は身構えた。 「どうしていずみさんのSNSに、お前とのツーショットが上がってるんだ?」  俺はあっと声を上げそうになった。当然馨が見る可能性に、どうして気づかなかったのだろう。 「それは……」 「お前がゲイで、彼女に関心が無いのはよく分かってる。でもな」  馨は、俺の言葉を遮った。 「好きでも無い、振った女とツーショットとか、無神経すぎねえ? それに俺、昨日見たんだよな。いずみさんがお前の部屋を訪ねるところ。しかもお前の部屋、ツインだろ? 一体どういうことだ?」  ――あの場面を、馨も見ていたのか。  俺は愕然とした。  ――仕方ない。  俺はとっさに、彰の嘘をそのまま拝借することにした。 「俺、彰と一緒に来たんだよ。部屋も、あいつと一緒。写真は、行きの新幹線内で偶然彼女と一緒になって、どうしてもって頼まれて彰が撮った。――でも、確かに無神経だったよな」  しかし馨は、なおも疑わしそうな顔をした。 「彰七段と一緒に来るなんて、初耳だぞ? 最初に俺が一緒に行こうって誘った時、お前そんなこと一言も言ってなかったじゃないか」 「……」 「昴太。お前、俺に何か隠してないか?」  

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