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第128話 ここにいるのは、あいつじゃない
影山さんが、はっと息を呑むのが分かった。ややあって、彼はためらいがちに言った。
「――本当に?」
「はい。昨日の続き、してください」
俺がそう言い終えるやいなや、影山さんは俺に口づけた。そのまま彼は、部屋に入って来ると、敷きかけていた布団の上に俺を押し倒した。
――もういいや。どうでも。
俺は、ぼんやりと思った。影山さんを好きかと言われれば、よく分からない。ただ、彼の気持ちを利用しているに過ぎない気もした。それでも俺は、誰かに縋りたかったのだ。
影山さんは、何度も俺に口づけながら、せわしなく俺のセーターを脱がせていく。しかし、むき出しにされた乳首に吸い付かれても、俺の身体はピクリとも反応しなかった。
――彰にされた時は、あんなに感じたのに……。
影山さんは、そんな俺の思いに気づかないようで、嬉しそうな声を上げた。
「可愛い乳首だね。すごく綺麗な色してる……」
俺は、ドキリとした。初めて俺を抱いた時、彰も同じことを言った。
『すごく可愛い。綺麗なピンク色して……』
一瞬、彰と影山さんの姿が重なり、俺は思わず目を逸らした。
――違う。ここにいるのは、彰じゃない……。
影山さんが、俺のジーンズに手をかける。でも俺は、これ以上影山さんの顔を見ていることができなかった。反射的に背を向けると、彼は怪訝そうな声を上げた。
「バックがいいの? 珍しいね」
――え。
俺は、一瞬固まった。確かに俺は、バックが苦手だ。だから彰とも、その体位では滅多にやったことが無い。
――でも、どうして影山さんがそれを……?
「よく知ってますね」
我ながら、エッチの最中とは思えないくらい冷静な声が出た。影山さんの動きが、一瞬止まる。
「あ、いや、あのUSBに入ってた映像では、正常位だったじゃない? だから……」
「……」
影山さんは、何だか妙に焦った様子だった。俺の気が変わらないうちにと思ったのだろう、彼は、俺のジーンズを乱暴に下着ごと脱がせた。しかし俺は、一気に気持ちが冷えていくのを感じていた。それが何故なのかは、自分でもよく分からなかった。
「昴太くん、好きだよ……」
影山さんが、俺の背中にキスを落とす。その瞬間、耐えられなくなった俺は、彼を押し退けていた。
「やっぱり無理です!」
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