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第134話 また一緒に暮らそう

「昴太。大丈夫?」 「ああ、うん」  俺は、慌てて頷いた。 「ああ、そうだ、ありがとう。拓斗から金を取り返してくれて。でもよく、見つかったな?」  すると彰は、けろりと言った。 「そりゃ、興信所を使ったからね」 「はあ?」  俺は、大声を上げた。 「そんなもん、すげえ費用かかるだろ? たかだか三十万取り返すのに、そんな……」 「君が働いて貯めた、大切なお金だろう? 絶対に取り返してやりたかったんだ」  彰は微笑んだ。 「とはいえ、速水もなかなか巧妙に逃げ回っていたようでね。でも君が、都内で彼を見かけたと言ったろう? だから興信所を急かした。君が出て行こうとした時、間が悪いことに興信所からの連絡が入ってね。君を引き留めたいのはやまやまだったけど、速水を捕まえる方が優先だと思ったから」  ――あの電話って、そうだったんだ。出て行って以来、連絡が無かったのは、それで忙しかったのか……。  俺は、愕然とした。 「ごめん、ちっとも知らないで……」 「いいんだよ」 「いや、本当に悪かった……。しかし拓斗のやつ、金なんて持ってたんだな?」  ――ギャンブル狂いで、借金まみれのはずなのに……。 「いや、所持金なんて無かったよ。だから、サラ金から借りさせた」  彰は、何でもないことのように言う。俺はぎょっとした。 「おいおい! そこまでさせたのかよ!」 「何としても、君にお金を返してやりたかったから。その後あの男がどうなろうが、知るものか。どうせもともと借金まみれなんだ、一か所増えたって同じだろう」  俺は、何だか泣きそうになった。こんなに愛されているのに、どうしてこいつの愛情を疑ったりしたんだろう、と思ったのだ。彰は、そんな俺をもう一度きつく抱いた。 「昴太。また一緒に暮らそう?」 「――え」 「君の荷物、処分なんてしてないよ? ああは言われたけど、はいそうですかって、捨てられるものか」  ――それは嬉しいけど。でも、一体どこで……?  彰は、そんな俺の心を読んだようだった。 「二人だけで、どこか新しい所に住むんだよ。匠がいるあのマンションでもなく、影山が手配したここでもなくね」 「で……でもお前、婚約の話はどうするんだ?」  すると彰は、俺の手を握りしめてこう告げた。 「婚約は、破棄する。そして僕は、天花寺の家を捨てる」

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