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第142話 ずっと君を憎んでいたんだ

「どういうことですか? 復讐って……。大学時代だって、俺と徹郎さん、お互い何の関係も無かったじゃないですか」  すると影山さんは、フンと笑った。 「そう思ってるのは、君だけだよ。君と俺は、大いに関係があったよ? だって、俺と秋野は、付き合ってたからね」  ――どういうことだ。  俺は一瞬、フリーズした。  ――まさか、亮佑が俺と別れた後に付き合った相手って、影山さん……? 「全然知らなかったんだね。秋野も可哀そうに」  影山さんが、やれやれといった表情を浮かべる。 「秋野が狂言を仕組んだって言っただろ? 君に愛されているのかどうか試すために、わざと別れ話を持ちかけたんだって。そして君は、すんなりそれを受け入れた。その後彼は、仕方なく俺と付き合い始めたんだ。それすら知らなかったなんて、つくづく君は、秋野に何の関心も無かったんだね」  ――影山さんは、ただの亮佑の先輩じゃなかったのか……。 「秋野は、俺と付き合い出してからも、ずっと君を引きずってた。とうとう上手くいかずに、俺たちは別れた。だから俺は、ずっと君を憎んでいたんだ。囲碁サークルで君の名刺をもらった時、チャンスだと思った。これを機に君に近付いて、復讐してやろうとね」  ――そんな……。  俺は、呆然と影山さんの顔を見つめた。 「それで、盗撮を?」 「その通り。しかも相手は有名なプロ棋士だ。いいネタになると思った。――でも」  影山さんが、もう一歩俺に近付く。俺は反射的に後ずさったが、背後にあるのがベッドだと気づき、ぞくりとした。 「彰七段に抱かれている君を観るうち、俺は君に惹かれていったんだよ。すごく可愛くて、いやらしくて……。これなら、秋野が執着したのも納得だなって思った」  影山さんは、俺の腕をつかむと、乱暴にベッドに押し倒した。 「止めてください!」 「さっき言ってたよね、俺にお詫びをしたいって。なら、こういう形でしてもらえる?」  俺は必死に暴れたが、体格と体力は雲泥の差だった。抵抗も空しく、次々と服が剥ぎ取られていく。 「今日は途中で止めないよ? もう君の前で、いい人の仮面を被る必要も無いからね……」  影山さんは、俺の両手首をつかんで、ベッドに押さえつけた。露わにされた上半身を舐めまわされて、俺は絶叫した。 「嫌だあ!」  その時突然、カシャリという音がした。俺と影山さんの動きが、同時に止まる。 「立派な強姦未遂の現行犯ですね」  冷ややかな声が、俺たちの頭上から降ってきた。驚いて見上げると、そこには信じられない人物が、カメラを手にして立っていた。  ――匠。

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