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第138話 それは、この上なく悲しい行為だった
彰は、俺のうなじに唇を寄せ、何度も口づける。もはやカムフラージュするのも面倒になったのか、奴はスポンジを放り出すと、手で直接乳首を弄り始めた。
「んっ……。あっ、はぁっ……」
久々の刺激に、俺の躰はあっという間に熱くなっていく。彰は、俺の首筋から背中にかけて唇を這わせながら、乳首をこねたりつまんだりを繰り返す。いつしか、力が抜けきった俺は、彰に体重を預けてもたれかかっていた。
「ここ。大変なことになってる」
前触れも無く、彰は俺の下腹部に手を滑らせると、勃ち上がったそれを握った。不意打ちの刺激に、俺は呻いた。
「この状態でお湯に浸かっても、リラックスできないんじゃない?」
「って……。お前のせいだろうが!」
「うん、分かってる。というわけで、ちゃんとお詫びするよ」
言うなり彰は、俺の身体を抱きかかえて立ち上がった。
「何……!?」
「ここに腰掛けて。しっかり、縁につかまっていてね」
彰は、俺を浴槽の縁に座らせると、俺の足の間にしゃがみこんだ。いきなりそれを咥えられ、俺は思わず身体をのけぞらせた。
「ああっ……」
「ほら、つかまってないと危ないって……」
いったん口を離して、彰が言う。奴は、再び俺のものを咥え直すと、舌と唇で激しく扱き始めた。すでに限界に達しつつあった俺は、あっという間に果ててしまった。
「良かった」
俺が出したものを嚥下した後、口の端を拭いながら彰が言う。俺はきょとんとした。
「何が?」
「これだけ濃いってことは、浮気はしてないね。まあ、まさかとは思ったけど」
「おまっ……」
一瞬、今朝の影山さんとの行為が蘇り、俺は顔を赤くした。しかし幸いにも彰は、それを単なる羞恥と捉えたようだった。
「一人でもしてなかったの?」
彰は悪のりし始めたが、俺は不意に切なくなった。昨夜の記憶が蘇ったからだ。俺は、彰に抱かれている自分の動画を、何度も繰り返し眺めて過ごした。その最中、生理的反応を起こして、自分で慰める羽目にもなった。でもそれは、この上なく悲しい行為だったのだ。
「ど、どうしたの?」
突然涙をこぼした俺を見て、彰は焦ったようだった。
「ごめんね。ちょっとふざけすぎて……」
「彰。俺、嬉しい。お前が来てくれて、俺のこと信じてくれて……」
俺は、しゃくりあげながら言った。
「ごめん、本当に悪かった。辛い目に遭わせて……」
彰が、俺を抱きしめる。奴の胸に顔を押し付けて、俺は言った。
「だったら、詫びとしてサービスしやがれ。バーカ」
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