138 / 168

第138話 それは、この上なく悲しい行為だった

 彰は、俺のうなじに唇を寄せ、何度も口づける。もはやカムフラージュするのも面倒になったのか、奴はスポンジを放り出すと、手で直接乳首を弄り始めた。 「んっ……。あっ、はぁっ……」  久々の刺激に、俺の躰はあっという間に熱くなっていく。彰は、俺の首筋から背中にかけて唇を這わせながら、乳首をこねたりつまんだりを繰り返す。いつしか、力が抜けきった俺は、彰に体重を預けてもたれかかっていた。 「ここ。大変なことになってる」  前触れも無く、彰は俺の下腹部に手を滑らせると、勃ち上がったそれを握った。不意打ちの刺激に、俺は呻いた。 「この状態でお湯に浸かっても、リラックスできないんじゃない?」 「って……。お前のせいだろうが!」 「うん、分かってる。というわけで、ちゃんとお詫びするよ」  言うなり彰は、俺の身体を抱きかかえて立ち上がった。 「何……!?」 「ここに腰掛けて。しっかり、縁につかまっていてね」  彰は、俺を浴槽の縁に座らせると、俺の足の間にしゃがみこんだ。いきなりそれを咥えられ、俺は思わず身体をのけぞらせた。 「ああっ……」 「ほら、つかまってないと危ないって……」  いったん口を離して、彰が言う。奴は、再び俺のものを咥え直すと、舌と唇で激しく扱き始めた。すでに限界に達しつつあった俺は、あっという間に果ててしまった。 「良かった」  俺が出したものを嚥下した後、口の端を拭いながら彰が言う。俺はきょとんとした。 「何が?」 「これだけ濃いってことは、浮気はしてないね。まあ、まさかとは思ったけど」 「おまっ……」  一瞬、今朝の影山さんとの行為が蘇り、俺は顔を赤くした。しかし幸いにも彰は、それを単なる羞恥と捉えたようだった。 「一人でもしてなかったの?」  彰は悪のりし始めたが、俺は不意に切なくなった。昨夜の記憶が蘇ったからだ。俺は、彰に抱かれている自分の動画を、何度も繰り返し眺めて過ごした。その最中、生理的反応を起こして、自分で慰める羽目にもなった。でもそれは、この上なく悲しい行為だったのだ。 「ど、どうしたの?」  突然涙をこぼした俺を見て、彰は焦ったようだった。 「ごめんね。ちょっとふざけすぎて……」 「彰。俺、嬉しい。お前が来てくれて、俺のこと信じてくれて……」  俺は、しゃくりあげながら言った。 「ごめん、本当に悪かった。辛い目に遭わせて……」  彰が、俺を抱きしめる。奴の胸に顔を押し付けて、俺は言った。 「だったら、詫びとしてサービスしやがれ。バーカ」

ともだちにシェアしよう!