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第153話 穴があったら入りたい

 俺は、耳まで真っ赤になっていくのが分かった。 「あなたと天花寺彰は、そういう関係だったということでいいですね?」 「――はい。彰とは、恋人同士です」  俺は、消え入りそうな声で言った。 「まあまあ。我々も、あなたのプライバシーを暴き立てるのが目的ではありませんから。ただ、事件を解明しないといけませんのでね」 「では、天花寺匠は、自分の兄の性行為を撮影していたと? 風間さん、あなたもそれに同意されていたということですか?」  もう一人の刑事が、俺をぎろりと見る。明らかに偏見に満ちた眼差しに、俺はむっとした。  ――こいつ、俺や彰もひっくるめて変態だと思ってやがるな……。 「違います。僕も彰も同意なんてしてません。あれは盗撮されたんです。そして、撮ったのは匠さんじゃありません。影山さんです」  ――いや、匠だって盗撮はしてたけど。でも、今それ言い出すと、話がややこしくなるし……。 「影山徹郎が盗撮したと?」 「はい。匠さんは、彰のそんなものが撮られたことに怒って、影山さんから取り返したんです」  ――微妙に怒りの理由は違うけど、一応嘘じゃねえし……。  すると、刑事たちの眼差しが鋭くなった。 「どうして影山はそんな真似を?」 「――その。実は僕、影山さんに以前から言い寄られていまして……。僕の、その……、裸が観たかった、と彼は言っていました……」  何でこんなことまでさらさなきゃいけないんだよ、と俺は穴があったら入りたい気分だった。一方刑事たちは、考え込んでいる。しばらくして、一人が言った。 「風間さん。あなたはさっき、影山とは仕事での関わりだと仰いましたよね? それは本当ですか? あなたもそうだが、影山徹郎も、過去に男性との交際歴がある。しかもあなたに言い寄っている、と。そんな男の部屋を、何の目的で深夜訪れたんですか?」  「影山さんとはそんな仲じゃありません!」  思わず、俺は怒鳴っていた。そりゃ、そう思われても仕方ないだろう。でも、さっきから刑事たちには、ゲイに対する偏見がある気がして、俺は腹が立って仕方なかったのだ。 「影山さんに騙されて、呼び出されたんです。何なら、僕の○インの記録を見て下さい!」 「まあ、落ち着いてください。あなたは、影山徹郎に呼び出されて、彼の部屋へ行ったと。その後何があったか、詳しく話してもらえませんか? あなたからは、睡眠薬が検出された。飲んだのは、ご自身の意思ですか?」 「――違います」 「では、誰かがあなたに飲ませたということですね?」 「……」 「風間さん?」  ――もう、限界だ。  追及されて、俺は観念した。影山さんに襲われたこともだが、彰の弟が犯罪者だなんて、世間に知られたくはなかった。しかし、俺の脳みそでは、誤魔化す術を思いつかなかったのだ。俺は、ぽつりぽつりと、あの夜の出来事を語り始めた。

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