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慎吾に世話チョコあげてみた
「そうだ慎吾これやるよ」
「何?」
机の上に置いた包みを慎吾が怪訝そうに見つめた。
何でそんな険しい顔で見てるんだよ。別に不審物じゃねぇよ。
「昨日バレンタインだったろ、藤崎に聞いたんだけど友チョコとか世話チョコとかいろいろあるらしいんだよな」
「だから?」
「だから、慎吾には世話になってるなーって思って世話チョコってやつ?」
相変わらず冷めている慎吾に今更何とも思わないけど、ちょっと迷惑だみたいな顔してんじゃねぇよ。眉間に皺までよせやがって。
「俺がチョコレート食べない事くらい知っているはずだよな?高校の時だって――」
「知ってる知ってる。だから世話チョコってもチョコじゃなくてクッキーにした」
バレンタインデーは毎年、もらったチョコを食べない慎吾の代わりに俺が食べていたんだから忘れるはずない。
「そんなドヤ顔されてもな……いいか翔、俺が苦手なのはチョコレートじゃなくて甘いものだ」
「はぁ!?チョコは食べないとしか言ってなかったじゃねぇか」
「甘いものが苦手だとも言ったけどな!」
言われてみればそんな事を言ってたような気がしなくもない……か?
だけど慎吾の好みなんていちいち記憶してねぇよ。
「苦手くらいなら食えよ、せっかく買ったんだから!」
「何で無理してまで食わなきゃいけないんだ。いらねぇよ」
「うわっ、お前ひどいな。せっかくの俺の気持ちを……」
「あーわかったわかった。気持ちだけもらうからお前が食え」
慎吾のやつ、面倒臭くなりやがったな。まぁ美味しそうだなと思って買ったから俺が食べるのは全然あり。
「……にしても、佑真さんも甘いもの好きじゃないって言ってたけど喜んでくれたのに、お前ってやつは……」
「五十嵐さんならその辺の石でもお前が渡せば喜ぶだろ」
「そんな事ないだろ」
佑真さんはそんな単純じゃない、と思う。多分。
クッキーを食べる俺に少し濃い目のコーヒーを淹れてくれる慎吾はやっぱり気遣いのできる男だなと思う。
でもこれじゃ自分チョコと大差ない。
来年は何か辛いものを慎吾には贈呈することにしよう。
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