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第2話

(…都筑はどういうつもりで、コレをくれたんだ?) あの日から数日が経ち、鑑識課で書類作業をしていた俺は、すでにクセになりつつある『首輪に触れる』をしながらそんな事を考えていた。 つい先日までβだった俺でも、αがΩに首輪を贈る意味くらい知っている。 (…だけどあの時の都筑からは、そんな要素イチミリも感じられなかったんだよな) 本人も『その辺の訳の分からないαに噛まれて勝手に番にされるよりマシでしょ』と言っていた。 …だから、そういう事なんだと思う。 でも、そうじゃなければいいのにって思う自分がいるのも確かで…。 「だーっ、そうじゃなければいい、ってなんだ!?こんなモンひとつでバカか俺はっ」 「わっ、びっくりした」 と、その時、側にいた望月が驚きの声をあげた。 「どうしたんですか?主任。いきなり大きな声で叫んだりして」 「と、わりぃ、望月。いや、何でもねぇんだ。大声出して悪かったな。なんか用だったか?」 「あ、はい。この書類の確認をお願いしたかったんですが、…本当に大丈夫なんですか?」 「ああ、大丈夫だ。これだな?どれどれ」 俺は望月に手渡された書類に目を通す。 「…ん、いいぜ。これで出しちまってくれ」 と言いニコリと笑って振り返れば、望月の表情に困惑の色が混じっていた。 「…主任?…何かいつもの主任とは違ったモノを感じるんですが」 「は?俺?いつもとかわんねぇけど? ………ッ」 と、返事をした直後、身体の内側から熱の様なモノが外側に向かって広がって行く感覚と息苦しさを感じた。 「…は、……ぁ、…ぁ…なんだ…?」 自身の異変に、思わず両腕で自分を抱きしめるようにすると、周りからざわめきが聞こえてくる。 「…なんか、ヘンな気配がしねぇ?」 「…ああ、気配って言うか匂い?あっちの方からか…?」 「……これって、茨城主任から…?」 周りの視線が、徐々に自分の方に集まって来るのを感じる。 だがそれに対応しようにも、熱を持った身体は思うように動かす事も出来ない。 「…はぁ、…う…」 「…主任。もしかして、主任は…」 何かに気づいた望月が俺に触れようとした時、鋭い制止の声が響いた。 「触らないで」 「え、」と思った時には、俺と望月の間に都筑が割って入っていた。 「茨城眠の事はボクが見る。だからキミは彼から離れて」 「えっ、でも…」 何かを言いかけた望月だったが、都筑の声よりも鋭い視線に射ぬかれ黙りこんだ。 「それから、この部屋にいるキミ達全員に言っておくけど、今の茨城眠の事は他言厳禁だから」 都筑の視線が鑑識課にいる一人一人に向けられていく。言外にある事も含めて厳命するかのように。 「は、はい。もちろんです」 「くれぐれもね。あと、奥の部屋を使わせてもらうよ」 「あ、俺達、外での業務がありますので」 「ほら、望月。お前も行くぞ」 「え、でも主任が、」 「いいから。早くっ」 バタバタと課から出て行く連中を無言で見送る都筑。 「察しのいい部下達で助かるね、茨城眠」 と俺に向かって言うと、俺の身体を支え奥の部屋へと移動した。 とりあえずソファに座らされたが、移動の際に都筑に触れた俺の身体はますます熱が上がり激しい疼きを伴っていた。 「…はあ、はあ、…は、」 「完全にヒートを起こしてる。抑制剤は?」 「…はぁ、…のん…だ」 「…薬が効きにくい体質なのかな」 座っている事すらツライ俺は、崩れるようにソファに横たわる。 …身体が疼いてたまらない。 αが欲しい。 熱に浮かされた俺の思考は、目の前のαを欲する事に囚われた。 「…は、…はぁ、…都筑…」 「…そんな欲に溺れた眼で見ないで。…自制が利かなくなる」 だが都筑は必要以上に俺に触れようとはしない。Ωのヒートに巻き込まれて…なんて、好きな相手でもなければ、ごめんだろう。 俺はその事実にチクりと胸を痛めながら、αを求める身体を慰める為に自身に手を伸ばした。 「……ふぅ、…うっ、…は」 布越しの刺激にも感じる身体。…でも足りない。俺はもたつく手つきでズボンを寛げようとして、都筑の手に止められた。 「…だめだよ、茨城。…ボクがシてあげる」 「…え、…ぁ、…ん」 都筑の唇が俺の唇に触れ、舌で開くように促される。ためらいがちに薄く開けば、水と一緒に錠剤が流れこんできた。 コクリと飲み込むも、飲みきれなかった雫が肌を伝い零れ落ちる。それを都筑の舌が追って舐めとった。 「……は……あ」 その動きに吐息が零れる俺の口を、もう1度、唇でふさぐ都筑。クチュクチュと舌を絡める深い口づけに酔いしれていく。 と、いつの間にか外気に晒されていた屹立に、都筑の指が触れた。 「……ふ……ぅ、…ん」 ゆっくりと上下に動きだす指に、俺は呆気なく精を放ってしまった。 「………ぅんん、っん」 ビクビクと震える身体を優しく抱きしめてくれる都筑。俺はその身体にしがみつく。 「………都筑……俺、…ごめ…」 「…いいよ。それより、まだ足りないみたいだね?」 「……………ん」 恥ずかしさで都筑の身体に押しつけた顔をあげられずにいると、都筑の手が萎えない屹立の奥の方に触れた。 グチュリ、と湿った音が俺の耳にまで届いた気がした。…それほどソコは濡れていた。 「…………え…?」 「……すごいね。…こんなに濡れるんだ」 「………や、…いう…な」 「……でも、ここ、簡単にボクの指を飲み込んで行くよ」 「………あ、…ああぁ」 都筑の指が俺のナカをあばいていく。その刺激に身体中が痺れるような快感に襲われた。 「……ナカも、トロトロだね」 「…は、あ、あっ」 「…そんなに気持ちいいの?…腰が揺れてる」 都筑の言葉が頭を素通りする。 ほしい。ほしい。ほしい。 都筑が欲しい。 それだけが頭を占め、都筑の指を咥え締め付けたまま、俺は登り詰めイってしまった。 脱力した俺の身体を都筑がぎこちなく労る。 さっき飲んだ錠剤が効いてるのか、眠くてたまらない。 「…少し、眠るといいよ」 と、目があった都筑が優しく微笑んでくれたので、俺は安心して眠りの淵を落ちて行ったのだった…。

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