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口説いた相手は年増のオカマ? 5
「……あら、目が覚めた?」
「あ、ああ……」
(女にしちゃ、やけに低い声だな)
人妻とか年増を見境なく口説いたのかもしれないが、自分ならやりかねない。どんな年代の女でも落とせる自信はあるのだ。そんなことを思いながら、顔を上げた創は危うくベッドから転がり落ちそうになった。
「えっ、マ、マジ……!」
バスタオルを身体に巻きつけた、しどけない姿で現れたのは紛れもなく男、だった。
二日酔いも眠気も、何もかもが一気に吹き飛んだ創が目をむき、固まっていると、その男はこちらを見てにっこりと微笑んだ。
柔らかくウェーヴがかかった長めの、褐色の髪から細い肩へと滴が落ちる。
身長は百七十ちょっとぐらいか。痩せぎすだが筋肉は程よくついていて、体毛は薄く、その顔立ちはかなり、いや、整い過ぎて怖いくらいの美形だ。
くっきりとした二重瞼に長い睫毛、大きめの黒目が潤んで見え、右の目元のホクロが妖しい色気を添えている。
鼻筋は高く、唇は程よい厚みでピンク色。甘いマスクというのはこういう男のためにある言葉だと思う。
線が細くて、いくらか中性的な感じもするが、こんなにも浮世離れしたピカピカの美男子がこの世に存在したとは。しかも、シャワーを浴びて自分の前に現れたとは。創は我が目を疑ってしまった。
「タバコを探しているの? あなたの洋服なら、そのクローゼットの中よ。シワになると困ると思って、ハンガーに掛けておいたから。いいわ、取ってあげる」
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