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まさかマジかのオカマ課長 5
ビルの四階のフロアすべてが開発部のスペースとなっている。ごちゃごちゃとした機械が置かれた一方で、整然と並んだデスクにはパソコンがずらり。
工学部時代の、研究室の雰囲気に似ていて懐かしいと、辺りをきょろきょろ見回していると、同期の豊田が創を見つけて声をかけてきた。
「加瀬じゃないか」
「よう」
ホワイトカラーの象徴──黒いジャケットにパリッとノリのきいた白いワイシャツ、水色のネクタイ姿の豊田を見て、創はふて腐れたような返事をした。
「金曜日、あれからどうしたんだ?」
「別に。どうもしねえよ」
あの夜の悪夢を甦らすような発言はして欲しくない。
「それよりさ、この荷物、ここに届けろって言われてきたんだけど、どこに置いときゃいいんだ?」
「ああ、ちょっと待ってて。オレもまだよくわからないんだ」
向こうにいる先輩社員に何やら尋ねたあと、豊田はすぐに戻ってきた。
「それってウチの課長宛らしいんだけど、さっきシステム部に行くって言って出たんだ。もうすぐ戻るだろうから、それまでオレが預かるよ」
箱の表には『江崎工業㈱ 開発部第二開発課内 天総一朗様』という宛名シールが貼りつけられている。
(この天総一朗(てん そういちろう)ってのが、豊田のいる課の課長の名前か)
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