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イケてる麺 3

 誰にでもできるような単純作業の連続。これが自分の社会人生活だと思うと、何だか虚しい。  おまけに、あのオカマが開発部に勤務していたなんて。この先いったいどうなるのか、暗澹としてきた。  食欲がイマイチ湧かず箸も進まない。ぼそぼそと食べているうちに、向こうから若い女の姦しい声が聞こえてきたのでそちらを見ると、ミチルが数人の女子社員を引き連れてオフィス内に入ってくるや否や、創の脇に立って自慢げに吹聴した。 「こちらがぁ、今年のイケメンナンバーワンの加瀬創さんでぇす。拍手、イェ~イ!」  一緒にやって来たのはミチルと同類の、いかにもなタイプの女たちで、金髪に近い髪の色に派手なメイクと、揃いの薄紫色の作業着姿が奇妙な、おバカ集団である。彼女たちは創の顔を見ると、 「えー、めっちゃイケてるしぃ~」 「カッコイイ! マジヤバ!」 「この会社になんでー? マジでー?」  などとはしゃぎ出し、彼のまわりを取り囲んで大騒ぎになった。  バカとはいえ、黄色い歓声を浴びせられて悪い気はしないが、場所が場所だけに周囲の視線が気になって憚られる。総務課から向けられる軽蔑の視線が痛い。  冷汗をかいて弱りきっているところへ、つかつかと近づく足音が聞こえてきた。 「ちょっとー、あんたたち、そんなに広がったら邪魔よ。もっと端っこに行きなさいよ」  聞き覚えのあるおネエ言葉はもちろん、天総一朗だった。両手に今朝方の箱を持って、ミチル軍団の面々を睨みつけている。

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