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イケてる麺 4

 出た!   さらなる窮地に追い込まれた創をよそに、女たちはノー天気な反応を示した。 「あー、テンちゃんだ」 (テ、テンちゃん?)  二十歳そこそこの女子社員たちに『テンちゃん呼ばわり』されるなんて、とても開発部のエリート課長とは思えない。  総一朗はそちらを眺めると「相変わらずミーハーやってるわねぇ」と呆れ顔になった。 「そこのあなた、そんな長い爪じゃ仕事できないわよ。あれまあ、真っ黒に塗っちゃってさ。もっと短くして、休みの日につけ爪でもつけて我慢しなさい」 「そっちも前髪がうっとおしいわ。そのでっかいピンで挟むのはよしてよね、ゴムで縛るか、切っちゃいなさいよ」 「工場でミュールは禁止よ。足をくじいたらどうするの、スニーカーに履き替えること」  まるでオバサン、小姑のように彼女たちに小言を言い、注文をつける総一朗、これが女性だったら反発をくらうが、オカマの苦言は素直に聞き入れられるようだ。 「ねえ、もしかしてテンちゃんも加瀬さんが目当てでここに来たの?」 「そうよ。この会社で、若くてイイ男はみーんなアタシのもの。ほら、もう昼休み終わりよ、さっさと戻りなさい」 「はーい」  仕方なく退散する女たちと、唖然として見守る創、総一朗はやはりオカマキャラとして社内全体で認知されているらしい。

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