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イケてる麺 5

 こちらに向き直ると、彼はさっき創が運んだ箱を差し出し、手近な机の上に置いた。 「この二つ、中身が注文と違っていたのよ。よそに送る分と間違えたんだと思うわ」 「では、送り返せばよろしいですね」 「ええ、お願いします」  よっこらしょ、と腰を上げ、宅配便の受注票を取りに行こうとする鈴木に向かって、総一朗は「ねえ鈴木課長、ちょっとの間、この新人借りていいかしら?」と訊いた。 「はあ、どうぞ」  創の腕を強引に引っ張り、壁際まで連れてきた彼は目を三角にしてなじった。 「まったくもう! 鼻の下伸ばして、何デレデレしてるのよ。胸がデカイだけが取り柄の女どもにチヤホヤされて、喜んでる場合じゃないでしょ!」  何でオレまでもが、このオカマに説教されなくてはならないのか、冗談じゃない。  よその部署とはいえ、相手が課長と呼ばれる肩書きを持つ男だということも忘れて、新入社員は反論した。 「デレデレしていようがいまいが、とやかく言われる筋合いはねえだろ!」 「あるわよ。だってアタシ、あなたのことが気に入ったんですもの」 「ええーっ?」  呆気に取られる創の前で、腕組みをした総一朗は高飛車に言い放った。 「ルックスは合格だけど、中身はペケね。仮にもこのアタシが見込んだ男があんな、脳みそが信州味噌の……」 (信州味噌ときたか) 「アホ女たちを相手にしているようじゃあ、落第よ。オッケー、これからバッチリ教育してあげるから覚悟しなさい」  自分好みの、外見も中身も最高にイイ男。そんな男に創を育て上げるのだと総一朗は高らかに宣言した。

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