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イケてる麺 6
「な、何でオレがあんたの好みに合わせなきゃならないんだよ? まったく大概にしろよな、このオッサンは」
「誰がオッサン、ですってぇ? ちょっと、言葉に気をつけなさいよ!」
怒る総一朗に対して、創は攻撃の手を緩めようともせずに言ってのけた。
「オッサンをオッサンと呼んで何が悪い。世間じゃ、そのくらいの齢の男はオッサンっていうんだよ。知らねえのか」
「このクソガキャ……」
怒り心頭の総一朗だが、大きく息をついていくらか冷静さを取り戻したようだ。
「あーら、このアタシに対して、そんなふざけた態度をとってもいいの?」
「はあ?」
総一朗はさらに、挑むように問いかけた。
「最近のケータイにカメラやムービー機能がついてるのは御存知よね?」
「そんなの今さら、常識だって……」
そこまで言いかけて、創はハッとした。
「まさか、金曜日の?」
「パソコンに落としてプリントアウトするとか、それとも、SNSか動画サイトにでも投稿しちゃおうかしら、うっふっふ」
不敵に笑う総一朗を見て、創は血の気が引いた。
あの晩の出来事を撮影されていたとしたら、その事実が公表されたら、二度と立ち直れなくなるのは必至だ。もちろん、そんな真似をしたら総一朗自身の名誉にも傷がつくけれど、相手が誰かわからないようにすれば、恥を晒すのは創だけで済む。
これってセクハラ? いや、パワハラか、こいつはもう、立派な脅しじゃないか。
「……オレを脅迫する気か?」
「あら、親切に提案してあげてるだけよ」
総一朗は妖しい流し目をしてみせた。
「近いうちに連絡するわ、お楽しみに」
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