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ナイスなミドルでライバル参上 1

 翌土曜日の午後、N市の駅前で待ち合わせをした創が所在なさそうに立っていると、着物姿の総一朗が目の前に現れたために、彼は「ええっ?」と、腰を抜かさんばかりに驚いた。  今日のテーマは『和』だと聞かされていたが、着物まで着てくるとは何たる徹底ぶり。もちろん自分で着付けをしたようだ。  渋い利休鼠色の紬だが、これはあくまでも略装で、正式な場には着用できない等、和装のルールをひとしきり聞かせたあと、彼は創の服装を上から下まで眺めまわした。 「そんな格好じゃ連れて行けないわ」  いきなりのダメ出しである。 「ジーンズで正座はキツイわよ。そのくたびれたTシャツも好感度を下げるから、やめてよね。足元にももっと気を配って欲しいし」  それって、むちゃぶりすぎるだろ。大学を卒業したばかりで、スーツを用意するのがやっと。気の利いたカジュアル服など持ち合わせているはずないじゃないか。  またしてもの無理難題に創はむくれ、反抗的な態度に出た。 「じゃあ、どうすりゃいいんだよ? 言っとくけど、着物なんか持ってないからな」 「そこまでしなくてもいいけど……」  そこで総一朗は駅前のデパートに創を連れて行くと、紳士服売り場で新しい服一式を揃えさせた。  ベージュのコットンパンツに、レンガ色のシャツ、生成りのジャケットと、どれもこれも自分では選ばないような色とデザインであるが、身につけてみると、グッと大人っぽく垢抜けて見え、男振りもアップしているのがわかる。

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