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ナイスなミドルでライバル参上 4

「それでも尺六とは呼ばないんだな」 「ええ。六寸管って別名がついているわ」 「さっき八橋検校って言ったよな。それ、京都の名物と関係あるの?」 「ピンポーン。あの焼き菓子は箏をかたどってるってわけ」 「へえー」  こんな調子で、総一朗は次々と豊富な知識を披露し、それぞれの楽器や、演奏曲について解説してくれたため、居眠りどころか退屈せずに聴くことができた。  正月以外には馴染みのない、和楽器の演奏を生で聴くのは初めてだった。それどころかロックや歌謡曲すら、およそコンサートと呼ばれるものに行ったことはない。  一人で過ごす休日といえばたいていパチンコ、仲間が四人集まれば麻雀、二、三人ならゲーセンから飲みに行ってナンパというパターン。自分の生きてきた世界がいかに狭いかを創は痛感した。  フィナーレは総一朗が話していた、現代邦楽の一曲である。しばしの準備のあとのステージに緋毛氈はなく、椅子に腰掛けた状態で演者たちが現れた。男性は黒のスーツに蝶ネクタイ、女性は白いブラウスに黒のロングスカートで、箏は立箏台と呼ばれる台に乗せられている。  この体制はまさにクラッシックの演奏会であり、実際、さっきまでと同じ楽器でありながら、奏でられるのはクラッシック音楽のような曲調で、これなら邦楽に馴染みのない人でも聴きやすいのではないかと創は感心した。  終了後、総一朗はおどけた調子で「いかがでした?」と訊いた。 「こういう音楽があるって知らなかった。何だか、すげーたくさんのことを吸収した気がする」

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