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ナイスでミドルなライバル参上 3
観客席に腰を下ろすと、受付で手渡された、流暢な筆文字で書かれた萌黄色のパンフレットを眺める。
「何だか眠くなりそうだけど」
「演奏する人に失礼だから、そのときは聴き入ってるフリをしてね」
いよいよ開演、錦糸で縁取られた鶯色の緞帳がゆっくりと上がる。スポットライトに照らされたステージの上には真っ赤な敷物――緋毛氈が敷かれ、向かって左側には華やかな和服姿の女性たちが三名、箏の前に、身体をやや斜めに向けて正座している。一番後ろの、紫の着物を着た女性が今回招待状をくれた、馴染みの店の女将ということだ。
右側は紋付袴姿の男性が二名、尺八を構えており、箏と尺八に挟まれた中央の位置には三味線を構えた男女が一名ずつ。
「今から演奏されるのは八橋検校作曲の古曲ね」
箏と三味線――三絃と呼ばれる――この二種類の楽器を担当するのは絃方と呼ばれ、演奏しながら唄も歌う。独特の節回しだ。
「ああやって、箏に対して少し斜めに座るのが生田流。真正面に座るのは山田流よ。二つの流派は箏爪、絃を引くために親指と人差し指と中指にはめる道具のことだけど、その形も違っていて、生田流は四角、つまりスクエアね。山田流は半楕円形の形なの」
曲の合間に、総一朗の『邦楽入門』のレクチャーが行われる。
「それから、ここで使われてる三味線は地唄用でね、津軽三味線とは大きさや革の種類、撥の使い方も違うのよ。尺八は八寸の長さがあるから尺八の名がついているんだけど、高音域を出すための短い種類、六寸ものもあるの」
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