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やり切れない想い 7

 開発部の部下たちの間で理想の上司と讃えられている、その姿をこの目でハッキリと確認すると、改めて彼の魅力に気づかされた思いだった。 「会議はたしか来週中だったな……怒りすぎて、何だか胃の辺りが痛くなってきたよ。そろそろ引き揚げようか」  いくらか憂い顔でそう言ったあと、節煙しているにもかかわらず、二本目のタバコを吸う総一朗を見た創の胸が疼いた。  あの晩のヤバイ写真の脅迫さえなかったら、十九も年上のゲイに、これ以上つき合う必要などないはずだ。  それなのに……  迫りつつある別れの時刻に落胆するなんて。少しでも長く、一緒に居たいと願うなんて。そんな感情を抱くオレはどうかしている。でも…… 「明日はどうすんの?」 「金曜、土曜。二日も無理矢理連れ回したんだから、日曜日ぐらいは解放してあげるよ。ゆっくり休むといい」  これまでの経緯からすると、ここは『オカマのオッサンから解放されてやれやれだ』というポーズをとらなくてはならない場面である。  自己嫌悪に陥るほど反省していたくせに、創はまたしても、心にもないセリフを言ってのけた。 「やっと自分の部屋でくつろげるなぁ。それとも女をナンパしに行こうかな」  総一朗は何も答えずに、伝票を持って立ち上がった。  N駅前まで創を送り届けたあと、銀の車体はあっという間に走り去った。その後ろ姿が見えなくなると、 (オレってヤツは……最低最悪の大バカ野郎だ! 本当はあの人のこと)  創は溜め息をつき、やり切れない想いに唇を噛みしめた。

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